セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 064:

腫瘍形成性膵炎との鑑別に難渋した膵頭部癌の一例

演者 室井 航一(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科)
共同演者 中江 康之(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科), 井本 正巳(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科), 浜島 英司(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科), 仲島 さより(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科), 坂巻 慶一(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科), 松浦 倫三郎(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科), 小林 健一(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科), 澤田 つな騎(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科), 内田 元太(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 内科), 伊藤 誠(医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 病理科)
抄録 【症例】58歳,男性.【既往歴】糖尿病,脂質異常症,虫垂炎手術.【嗜好歴】飲酒:20~40代はウイスキーボトル1/2~1本/週.53才で禁酒.喫煙:20本x40年.【現病歴】35才時に急性膵炎初発.53才時に急性膵炎で入院歴あり.平成25年5月25日腹痛を主訴に近医を受診し,急性膵炎再発として入院.症状改善後に食事を再開したところ肝機能障害と黄疸が出現し,7月9日当科へ紹介となった.【入院時現症】体温36.6℃.結膜に黄疸.腹部に圧痛なく,腫瘤触知せず.【検査成績】血中膵酵素は正常であったが、肝胆道系酵素の上昇を認めた.CA19-9は正常範囲内,DuPan-2は1600U/mlと上昇していた.【画像所見】ダイナミックCTでは膵頭部に造影効果が不良で,境界不明瞭な腫瘤性病変を認めた。MRCPでは下部胆管および膵頭部膵管の狭窄,および尾側膵管の拡張を認めた.腹部USでは膵頭部に低エコー腫瘤を認めたが、EUSでは膵頭部全体が低エコーで限局性腫瘤を認めなかった.PET-CTでは膵頭部に有意な集積を認めなかった.ERCPでは膵頭部膵管の長い狭窄と拡張した分枝膵管,および拡張した尾側膵管内の透亮像を認めた.【経過】以上の所見から,腫瘤形成性膵炎が疑われた.急性膵炎を繰り返しており胆管狭窄もあること,また膵頭部癌を完全に否定しきれないことから手術適応と考え,8月2日当院外科にて亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術中USでは腫瘤は確認できず、切除標本の割面でも肉眼的に腫瘤を確認することは困難であった.病理診断は高分化型管状腺癌を主体とする浸潤硬化性膵癌であった.非腫瘍部の膵実質は広範囲に繊維化およびラ氏島の減少を認め、慢性膵炎の像であった.【考察】本症例は、膵癌としては典型的ではない所見がいくつかみられ,腫瘤形成性膵炎と考えた.これは,基礎に慢性膵炎による形態変化や強い線維化を伴っていたためと考える.このような症例では鑑別が膵癌と腫瘤形成性膵炎の鑑別が難しいことがあり,病理診断も含めた総合的な判断が必要であると考える.
索引用語 膵癌, 腫瘍形成性膵炎