セッション情報 シンポジウム「炎症性腸疾患の診断と治療 up-to-date」

タイトル S-02:

当科におけるクローン病インフリキシマブ効果減弱例の検討

演者 荒木 寛司(岐阜大学 医学部 消化器病態学)
共同演者 井深 貴士(岐阜大学 医学部 消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大学 医学部 消化器病態学)
抄録 【目的】インフリキシマブ(IFX)の長期投与症例の増加に伴い、実地臨床で効果減弱例の出現が問題となっている。当科でのIFX効果減弱例に臨床病理学的検討を加えた。【方法】対象は2003年5月から2012年8月までに当科でクローン病に対しIFXを投与した64例。平均年齢32.7歳、小腸型14例、小腸大腸型31例、大腸型19例であった。【成績】64例中有効例は62例(97%)であった。有効例のうち59例に維持投与が行われた。維持投与中効果減弱を認めた症例は25例42%であった。効果減弱例では4例でアダリムマブに変更、増量投与が14例、短縮投与が7例に行われた。効果減弱例と効果維持例では平均年齢32.2歳:33.8歳、男女比27:6と16:9で差は認めなかった。病型では大腸炎型で2:11、小腸大腸型で7:9、小腸型で16:11と大腸炎型で有意に効果減弱例は少数であった。IFX投与開始までの期間は9.4年:4.9年で有意に投与開始までの罹病期間が長期であった。IFX投与までの手術既往は48%:30.3%、バルーン拡張歴は20%:3%であった。Half ED以上の栄養療法は36%:24.2%であった。効果減弱例では累積入院率と手術率が1年44%、12%、3年62%、16%、5年80%、34%に対し効果維持例では1年21%、9%、3年33%、9%、5年33%、9%で有意に累積入院率が高値であった。IFX投与開始から効果減弱までの期間は中央値483日であった。効果減弱例での治療強化(短縮・増量)前後のCRPは前が2.0mg/dl、後が1.5mg/dlであった。効果維持例の最新のCRPは平均0.22mg/dlであり効果減弱例では治療強化後も有意にCRPは高値であった。【結論】IFX効果減弱例は投与開始までの罹病期間が長く、手術歴、バルーン拡張歴のある症例に多く、効果減弱例ではIFX治療開始後の経過で入院や手術を要する症例が効果維持例に比し有意に多くQOLの低下が問題となる。
索引用語 クローン病, インフリキシマブ