セッション情報 一般演題

タイトル 074:

重症急性膵炎後に発症した劇症1型糖尿病の1例

演者 宇佐美 彰久(トヨタ記念病院 消化器科)
共同演者 鈴木 貴久(トヨタ記念病院 消化器科), 篠田 昌孝(トヨタ記念病院 消化器科), 高士 ひとみ(トヨタ記念病院 消化器科), 村山 睦(トヨタ記念病院 消化器科), 森島 賢治(トヨタ記念病院 消化器科), 曽田 智大(トヨタ記念病院 消化器科), 山田 健太朗(トヨタ記念病院 消化器科)
抄録 【患者】20歳、男性。【主訴】腹痛【既往歴】なし【家族歴】なし【飲酒歴】機会飲酒【現病歴】2日前から腹痛あり2012年当院診。血液検査とCTで急性膵炎と診断され同日入院。【現症】体温36.9℃,血圧107/ 70mmHg,脈拍82回/分・整。貧血、黄疸なし。心窩部に圧痛あり。【血液、尿検査】CRP4.1mg/ dlと軽度上昇し、血清アミラーゼ327U/ l、尿中アミラーゼ6230 U/ lと高値。尿糖陰性。【CT】初診時膵臓は全体に軽度腫大し、ダグラス窩に少量の腹水あり。第2病日ダイナミックCTでは膵に造影不良はなかったが、腎下極以遠まで炎症の波及を認めた【臨床経過】絶飲食、補液、蛋白分解酵素阻害剤による治療を開始。第2病日のCT結果で重症急性膵炎と診断。MRCPで異常所見なく特発性急性膵炎として保存的治療を継続。第4病日に著明な口渇、嘔気、多尿が出現し第5病日に意識混濁を生じた。血糖値1507mg/ dl、尿ケトン体(4+)、動脈血液ガス分析でpH6.920、pCO2 7.1mmHg、BE-29.5mmol/ l、HCO3 1.4mmol/ lでありケトアシドーシスと診断。クレアチニン3.2 mg/ dl 、K8.0Meq/ lと高値であり、急性腎不全を合併していた。HbA1cは正常で、GAD抗体陰性。血中Cペプチドは0.1μg/ day以下であり、劇症1型糖尿病と診断。インスリン投与、アシドーシス、電解質の補正により、翌日には意識状態が改善。第25病日退院。インスリン依存状態が持続し通院治療中。【考察】劇症1型糖尿病は、2000年に提唱された1型糖尿病のサブタイプの一つである。発症は非常に急速であり、著明な高血糖とケトアシドーシスを伴う。機序はいまだ不明な点が多い。急激な血糖上昇のため、口渇、多飲、多尿、倦怠感を示し、重症化すると昏睡を来たし、時に致死的状態となる。入院時の腹痛、膵酵素上昇、および膵腫大は、劇症1型糖尿病に伴うものと考えた。本症例のように急性膵炎と診断され、その後劇症1型糖尿病の診断された症例は2002年~2012年で自験例含め17例存在する。原因不明の急性膵炎症例を診療する際には本症を念頭に置くことが重要である。【結語】急性膵炎様症状で発症した劇症1型糖尿病の1例を経験したので報告した。
索引用語 急性膵炎, 劇症1型糖尿病