セッション情報 一般演題

タイトル 080:

直腸悪性黒色腫の一例

演者 濱宇津 吉隆(国家公務員共済組合連合会 東海病院 内科)
共同演者 丸田 真也(国家公務員共済組合連合会 東海病院 内科), 北村 雅一(国家公務員共済組合連合会 東海病院 内科), 三宅 忍幸(国家公務員共済組合連合会 東海病院 内科), 加藤 亨(国家公務員共済組合連合会 東海病院 内科), 山本 竜義(国家公務員共済組合連合会 東海病院 外科), 早川 直和(国家公務員共済組合連合会 東海病院 外科), 宮原 良二(名古屋大学大学院 医学系研究科 消化器内科学), 後藤 秀実(名古屋大学大学院 医学系研究科 消化器内科学)
抄録 患者は70歳代の男性。2か月前に下血を主訴に近医を受診し痔核の診断を受けた。5日前に再度下血したため近医を再診し、精査目的に当院を紹介受診となる。当院で行った大腸内視鏡検査では、直腸Rbに発赤調で上皮構造が無構造な径2cm弱の隆起性病変を認めた。隆起性病変の肛門側には黒色色素を含む粘膜を認め肛門上皮まで連続していた。超音波内視鏡検査では、病変は第2層に主座を置く低エコー腫瘤として描出された。第3層の持ちあがりを認め、粘膜下層への浸潤が疑われたが第4層には変化を認めず、深達度はSMまでと診断した。生検の病理結果では、異型細胞が豊富な血管を伴って増生しており、褐色色素も認めた。免疫染色ではS100(+)、Melan-A(+)、HMB45(+)で悪性黒色腫と診断した。胸腹部造影CTでは明らかな遠隔転移は認めなかった。またPET-CTでも直腸への集積以外には有意な集積を認めなかった。本人・家族に十分に説明したうえで、当院外科にて腹腔鏡下直腸切断術を行った。切除標本の病理結果は、直腸悪性黒色腫、pSM、LY(+)、V(-)、pN(+)、PM0、DM0、RM0であった。術後の経過は問題なく退院後は当院外来に定期通院中である。直腸悪性黒色腫は、全悪性黒色腫の約1~2%、全直腸肛門部悪性腫瘍の中で占める割合は1%未満と言われており非常に稀な疾患である。また早期から血行性・リンパ行性に転移を来しやすいという性質から予後は極めて不良である。症状は下血、肛門部痛、便通異常など非特異的なものであるため診断が遅れることがある。本症例も3月に下血した時点では痔核として経過観察されている。早期発見のためには下血を認めた際には積極的に内視鏡検査を検討すべきである。また本疾患の長期生存条件として、腫瘍最大径が5cm未満、壁深達度がpm以内、潰瘍形成のない隆起型との報告がある。本症例はいずれも合致しているが今後の厳重な経過観察が必要である。
索引用語 直腸悪性黒色腫, 手術