セッション情報 一般演題

タイトル 063:

若年女性に発症した充実性膵腫瘤の一例

演者 小屋 敏也(静岡済生会総合病院)
共同演者 三浦 眞之祐(安城更正病院), 脇田 重徳(安城更正病院), 宮本 康雄(安城更正病院), 鶴留 一誠(安城更正病院), 岡田 昭久(安城更正病院), 馬渕 龍彦(安城更正病院), 竹内 真実子(安城更正病院), 細井 努(安城更正病院), 山田 雅彦(安城更正病院)
抄録 症例は20歳代女性で、前年の健診で胆嚢ポリープ、腎嚢胞を指摘されていた。経過フォロー目的に施行された腹部エコー検査により膵体部腫瘤を認めたため当院を紹介された。既往歴、家族歴に特記事項はなく、身体所見にも異常は認められなかった。MDCTでは膵体部に20mm大の境界明瞭な腫瘤を認めた。腫瘤の中心には結節状の淡い高吸収域を認めた。主膵管は腫瘤により閉塞し、尾側膵管は拡張していた。腫瘤は膵実質より淡く造影されており、嚢胞成分、明らかな石灰化は認められなかった。MRI検査では腫瘤はT1強調像では低信号、T2強調像で淡い高信号を呈し、中心部は辺縁よりやや高信号を呈していた。拡散強調像では中心部を除き著明な高信号となっていた。腹部超音波検査、超音波内視鏡検査では腫瘤は膵とほぼ均一なエコーレベルであり、血流は認められなかった。腫瘤中心部には10mm大の類円形の高エコーな部分を認めた。主膵管は膵内で嘴状に先細りとなり閉塞し、尾側は著明に拡張していた。上部消化管内視鏡検査、注腸検査、乳腺超音波検査、子宮卵巣造影MRI検査を施行したが、同時発生している腫瘍を認めず、転移性膵腫瘍は否定的と考えた。solid-pseudopapillary neoplasm(以下SPN)、神経内分泌腫瘍をはじめ充実性膵腫瘍を鑑別に挙げたが、いずれの典型的な画像所見とも合致しなかった。若年女性に短期間で出現した膵充実性腫瘤であり手術適応と考え、初診時より12週間後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。摘出標本では、膵体部に25mm大の灰白色充実性腫瘍が認められ、腫瘍内にはリング状の構造を認めた。腫瘍は類円形の核と好酸性胞体からなる腫瘍細胞が血管を軸とした乳頭状の構築を示しつつ増殖しており、リング状部分には硝子様間質に石灰沈着が散見された。免疫染色でCD10陽性、βcateninが核と細胞質ともに染色され、SPNと診断した。嚢胞成分を伴わないSPNの1例につき若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 膵腫瘍, SPN