共同演者 |
河俣 浩之(済生会松阪総合病院 内科), 行本 弘樹(済生会松阪総合病院 内科), 吉澤 尚彦(済生会松阪総合病院 内科), 青木 雅俊(済生会松阪総合病院 内科), 福家 洋之(済生会松阪総合病院 内科), 橋本 章(済生会松阪総合病院 内科), 脇田 喜弘(済生会松阪総合病院 内科), 清水 敦哉(済生会松阪総合病院 内科), 中島 啓吾(済生会松阪総合病院 内科), 森 源喜(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科), 小田 一郎(国立がん研究センター中央病院 内視鏡科) |
抄録 |
【はじめに】胃癌治療ガイドラインでは、適応拡大病変として潰瘍合併のない分化型粘膜内癌では大きさは問わないとされている。ESDは大型病変の一括切除を可能とした優れた治療法であるが、超大型病変の報告は少ない。今回我々は切除径が100mm以上となった超大型適応拡大病変を経験した。国立がん研究センター中央病院(NCCH)の超大型病変症例の考察を加え報告する。【症例】70代女性、2013年5月に近医で軽度貧血に対して施行した上部消化管内視鏡検査で異常を指摘され紹介となった。胃体中部から前庭部小弯にかけて前後壁にわたる約10×10cm大の広範囲の扁平隆起性病変を認め、病変は境界明瞭で軽度発赤調を呈し、生検結果は高分化管状腺癌であった。超音波内視鏡所見も含め明らかな粘膜下層への浸潤を疑う所見は認められなかった。以上より胃癌0-IIa, tub1, T1a(M), UL(-), 10cm、適応拡大病変と診断しESDを施行した。約120分間で穿孔などの偶発症なく腫瘍は一括切除可能であった。病理診断は胃癌0-IIa, 9×cm, tub1, T1a(M), ly0, v0, HM0, VM0, UL(-)であり、適応拡大病変治癒切除であった。後出血は認めず経過良好でESD後11日目に退院となった。現在約4か月間PPI投与を行っているが、ごく一部分に潰瘍が残存しているのみで狭窄、通過障害なく経過良好である。【考察】切除長径が100mm以上となったNCCH 19例では、平均切除時間は約4時間、後出血2例、穿孔3例、非治癒切除13例(粘膜下層深部浸潤8例)であった。超大型病変は技術的難易度の高さに加え、深達度診断が困難となる可能性が示唆され、適応の診断には慎重な対応が必要と思われた。本症例は、粘膜内癌で脈管侵襲、潰瘍合併もなく適応拡大病変治癒切除であった。また切除後の潰瘍治癒に長期間を要しているが、狭窄、蠕動機能障害は認めず経過は良好である。 |