セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 005:

炎症性腸疾患に類似した大腸病変を認め、診断に苦慮した胃癌腹膜播種の一例

演者 樋口 友洋(浜松医科大学医学部附属病院)
共同演者 山田 貴教(浜松医科大学医学部附属病院), 宮津 隆裕(浜松医科大学医学部附属病院), 川崎 真佑(浜松医科大学医学部附属病院), 鈴木 聡(浜松医科大学医学部附属病院), 市川 仁美(浜松医科大学医学部附属病院), 佐原 秀(浜松医科大学医学部附属病院), 谷 伸也(浜松医科大学医学部附属病院), 大石 慎司(浜松医科大学医学部附属病院), 寺井 智宏(浜松医科大学医学部附属病院), 鏡 卓馬(浜松医科大学医学部附属病院), 栗山 茂(浜松医科大学医学部附属病院), 岩泉 守哉(浜松医科大学医学部附属病院), 杉本 光繁(浜松医科大学医学部附属病院), 大澤 恵(浜松医科大学医学部附属病院), 金岡 繁(浜松医科大学医学部附属病院), 古田 隆久(浜松医科大学医学部附属病院), 杉本 健(浜松医科大学医学部附属病院)
抄録 症例は78歳、男性。X-1年1月頃より排便障害と右大腿の浮腫が出現し、X-1年2月近医を受診。造影CTで上行結腸および直腸の壁肥厚と右腸腰筋の腫脹、右大腿静脈血栓を指摘された。下部消化管内視鏡検査(CS)では直腸のびらんと横行結腸の浮腫状狭窄を認め、これより口側に内視鏡は挿入困難であった。同院にて、潰瘍性大腸炎と下肢静脈血栓症と診断された。5-ASAとワーファリンが投与され、排便障害は一時的に改善したが、右大腿の浮腫は改善しなかった。X-1年10月頃より食欲不振と体重減少(半年で9kg)が顕著となり、同院にて上部消化管内視鏡検査(EGD)施行されたが、明らかな潰瘍や腫瘍性病変を認めず、生検でも悪性所見を指摘されなかったため、経過観察された。その後も、症状は改善せず、X年4月に再検された下部消化管内視鏡で横行結腸の狭窄に加え、直腸(Rb)に2cm大の0-IIa様の隆起病変を認め、当科紹介となった。当院で施行したCSでは横行結腸にクローン病を疑わせる敷石様の浮腫状狭窄を認めたが、生検所見は、非特異的な炎症所見のみであった。また、直腸の0-IIa様病変はnon-lifting sign陽性であり、生検では、印鑑細胞癌を認めた。EGDでは、前庭部において、壁の進展は不良で、びらんを伴う粗造な粘膜を認めた。生検では一部から未分化型腺癌を認めた。直腸および胃病変の免疫染色は、いずれもCK7(+)、CDX2(±)、MUC2(-)、MUC-5AC(+)であった。以上の結果より、4型進行胃癌、腹膜播種による結腸、直腸、腸腰筋病変(cT4N3M1,cStagaeIV)と右下肢の還流障害に伴う右大腿静脈血栓と診断した。X年6月よりS-1/CDDP療法を3コース施行。大きな有害事象なく、食欲不振、体重減少、排便障害、右大腿の腫脹はいずれも改善し、造影CTにおいても、結腸の壁肥厚に変化は乏しいが、胃壁の肥厚、腸腰筋の腫脹は改善している。大腸に炎症性腸疾患に類似した病変を認め、診断に苦慮したものの、免疫染色を含めた病理学的な検索により診断に至った胃癌腹膜播種の一例を経験したため、若干の文献的な考察を加えて報告する。
索引用語 胃癌, 炎症性腸疾患