セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 046:

ダビガトランによる剥離性食道炎の1例

演者 行本 弘樹(済生会松阪総合病院)
共同演者 河俣 浩之(済生会松阪総合病院), 吉澤 尚彦(済生会松阪総合病院), 福家 洋之(済生会松阪総合病院), 青木 雅俊(済生会松阪総合病院), 橋本 章(済生会松阪総合病院), 脇田 喜弘(済生会松阪総合病院), 清水 敦哉(済生会松阪総合病院), 中島 啓吾(済生会松阪総合病院)
抄録 【はじめに】ダビガトランは「非弁膜症性心房細動における虚血性脳卒中、全身性塞栓症の発症抑制」の目的で使用される抗凝固薬である。従来使用されているワルファリンに比較し、投与量の微調整の必要性がなく抗凝固作用は同等の効果を有していることから今後投与される症例が増加することが予想される薬剤である。副作用については未だ明らかになっていないが、消化器症状、出血症状の発生頻度が高いとされている。その中でも特異な内視鏡像を呈する食道炎が近年注目されている。今回我々はダビガトラン投与開始後に発症した剥離性食道炎の1例を報告する。【症例】80歳代女性、近医で高血圧、脂質異常症に対して内服加療中で、2013年6月から慢性心房細動に対しダビガトラン220mg/日を開始されていた。服薬時の飲水量は約200ml/回で、服薬後の臥床の習慣は無かった。服薬開始2ヶ月後に食後心窩部痛があり当科受診した。上部消化管内視鏡を施行すると明らかな逆流性食道炎を示唆する所見はなく、胸部下部食道を中心として、びまん性に白色の膜様物質の付着を認めた。白色の膜様物質は食道上皮の剥離と考え剥離性食道炎を疑った。新規に投与されたダビガトランの影響を考え服用中止、さらに5%アルギン酸ナトリウム60mg/日の内服開始したところ自覚症状は速やかに軽快した。薬剤中止後44日目に再度内視鏡を施行すると白色の膜様物質は消失しびらん、潰瘍などの病的所見も認められなかった。以上の経過よりダビガトランによる薬剤性剥離性食道炎と診断した。【考察】ダビガトランによると思われる薬剤性食道炎を経験した。本症例では下部食道に白色の膜様物質が付着したびらんを認める特異な内視鏡像を呈し、ダビガトラン起因性食道潰瘍の過去の報告の内視鏡像も同様であった。ダビガトランは今後投与症例が増加すると予想されるため、心窩部痛に注意し同様の内視鏡像を認めた場合には薬剤性剥離性食道炎を疑う必要があると考えられた。
索引用語 ダビガトラン, 食道炎