セッション情報 一般演題

タイトル 012:

A型胃炎に伴った胃神経内分泌腫瘍をESDで切除し得た1例

演者 安田 諭(土岐市立総合病院 内科)
共同演者 白井 修(土岐市立総合病院 内科), 荒田 真子(土岐市立総合病院 内科), 清水 豊(土岐市立総合病院 内科)
抄録 症例は58歳、男性。主訴は上腹部痛。既往歴、家族歴に特記事項なし。嗜好歴は喫煙20本/日、飲酒なし。現病歴は1カ月前より上腹部痛を自覚して平成25年5月13日に当科受診となった。5月13日に上部消化管内視鏡検査(以下EGD)を施行した。胃粘膜は前庭部に比し胃体部を中心に萎縮性胃炎を認め、体上部前壁に長径約7mm程度の隆起性病変を認めた。病理組織学的には比較的小型の細胞が索状配列を基本として胞巣状に増殖、免疫染色ではchromograninA+、synaptophysin+、CD56+、MIB-1<1%であり、生検結果ではあるがneuroendocrine tumor(NET), G1相当と診断した。5月29日に胸腹部造影CT検査、6月2日に腹部US検査を施行した。脂肪肝、胆石、腎嚢胞、左鼠径ヘルニアを認めた以外に、明らかな転移、リンパ節腫大、その他の腫瘍性病変も認めなかった。血液検査では、ガストリン1700pg/dl、抗胃壁細胞抗体40倍と異常高値を認めた。以上より、A型胃炎に伴った胃NETと診断し、長径10mm以下で単発の病変であり、内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)にて切除可能と判断した。6月10日に入院、第2病日に胃ESDを施行した。腫瘍径7x5mm、切除径30x30mm、切除時間39分にて一括切除した。最終病理結果では、術前同様NET G1、粘膜下層への浸潤を認めず、水平・垂直断端ともに陰性であった。術後問題なく、3カ月経過した現在も明らかな再発なく外来通院中である。自験例は、A型胃炎に伴うType1の胃NET(従来のカルチノイド)の1例であった。Type1は、発育が非常に緩徐で悪性度もType3に比し予後良好とされている。さらに自験例は多発病変を認めない長径10mm以下の病変であり、ESDにて内視鏡的に完全切除し得た。本邦ではType1胃NETの内視鏡治療後の長期観察例は少なく、今後も注意深く経過をみる必要があると考えられた。
索引用語 胃神経内分泌腫瘍, A型胃炎