セッション情報 | 一般演題(専修医(卒後3-5年)) |
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タイトル | 119:トシリズマブ投与後にEBVの再活性化をきたした一例 |
演者 | 梶川 豪(一宮市立市民病院 消化器内科) |
共同演者 | 中條 千幸(一宮市立市民病院 消化器内科), 山中 敏広(一宮市立市民病院 消化器内科), 水谷 恵至(一宮市立市民病院 消化器内科), 金森 信一(一宮市立市民病院 消化器内科), 井口 洋一(一宮市立市民病院 消化器内科), 石黒 裕規(石黒クリニック), 平松 武(一宮市立市民病院 消化器内科), 金倉 阿優(一宮市立市民病院 消化器内科), 小澤 喬(一宮市立市民病院 消化器内科), 坪内 達郎(一宮市立市民病院 消化器内科) |
抄録 | 症例は70歳男性。10年以上関節リウマチに対して整形外科通院中で、現在トシリズマブの投与中。2012年10月15日より食欲不振・倦怠感が出現。その後38℃台の発熱が出現し食欲不振も持続するために10月22日当院受診。肝胆道系酵素の上昇を認め、急性肝炎の診断で同日消化器内科入院となった。スクリーニングの採血では明らかな肝炎の原因は指摘できず。トシリズマブ投与後の免疫不全状態も考慮し、CFPM、ACV、MCFG投与。肝酵素上昇傾向であり肝不全兆候を認め、第4病日には重症急性肝炎の状態。血球貪食症候群も疑われるために、FFP・血小板を輸血しながら肝生検と骨髄穿刺を施行。しかし、その後血圧低下しCPR施行するも同日に亡くなられた。剖検では腹腔内に出血所見を認め、腹直筋血腫の腹腔内穿破による出血性ショックと考えられた。肝生検検体では重症急性肝炎の所見と少数ながらEBERの染色される部分を認めた。骨髄検体では多数の血球貪食像に加え、EBERでも染色される部分が散在性に認められた。後日判明した外注検査の結果に加えEBV-DNA量も上昇を認め、EBVの既感染・再活性を考える結果であった。今回の経過としてトシリズマブ投与による免疫機能低下によってEBV再活性化し、血球貪食症候群(HPS)も合併し、肝炎含め全身炎症症候群の状態となったと考えられた。EBVはヒトを自然宿主として感染するが、ほとんどの場合乳幼児期に不顕性感染し潜伏状態となり終生潜伏感染が持続する。健常人の90~95%がEBV潜伏感染状態にあるとされている。免疫不全など免疫恒常性の破綻がおこると、EBVの再活性化が制御できなくなりEBVの異常な再活性化やEBV関連リンパ増殖性疾患の発症が誘導されると考えられる。また、HPSはウイルス関連に伴うものも多数報告されており、特にEBVが原因によるものが感染症関連のHPSの半数を占めるとされている。近年HBVの再活性化による肝炎が話題となっているが、今回EBVの再活性化から急激な経過をたどり剖検を施行した1例を経験した。 |
索引用語 | EBV再活性, 血球貪食症候群 |