セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 036:

肺腺癌の転移性空腸腫瘍による腸重積症に対し内視鏡的整復を試みた一例

演者 小林 新(市立四日市病院)
共同演者 山脇 真(市立四日市病院), 熊谷 成将(市立四日市病院), 二宮 淳(市立四日市病院), 前川 直志(市立四日市病院), 桑原 好造(市立四日市病院), 水谷 哲也(市立四日市病院), 小林 真(市立四日市病院), 矢野 元義(市立四日市病院)
抄録 【背景】肺癌の小腸転移は稀だが,肺癌の増加と集学的治療の進歩による進行例の生存期間延長から近年増加傾向にある.【症例】81歳,男性 【主訴】嘔吐【既往歴】喘息【現病歴】2011年11月当院呼吸器科で右肺上葉腺癌cT2aN3M0と診断され,2012年1月より化学療法(CBDCA+Pemetrexed,DTX,GEM)を行っていた.2013年6月に多発脳転移が出現し,7月17日よりガンマナイフ治療のため入院となった. 7月18日から嘔吐を繰り返し,CTで左上腹部に小腸重積を認め,外科紹介となった.しかし全身状態不良(PS4と喘息発作)で手術治療は困難と判断され,翌日消化器科にて内視鏡的整復および診断確定目的でシングルバルーン小腸内視鏡検査を行った.Treitz靭帯より肛門側に10cmの空腸に捻転を,そのさらに10cm肛門側に腸管の重積を認めた.重積の先進部に長径8cmの不整な亜有茎性腫瘍を認めた.スライディングチューブのバルーンを腫瘍の肛門側まで挿入し,バルーンを拡張させ,スライディングチューブを引き戻すことで重積の解除を試みた.しかし捻じれと癒着の影響で十分な引き戻しが行えず患者が疼痛を訴えたため,本法を断念した.また小児の腸重積解除の要領で重積部より肛門側空腸を送気して内圧を上昇させることで重積の解除を試みたが解除には至らず処置を終えた.術翌日のCTで重積は解除できてはいないものの明らかに改善しており,小腸追跡造影検査でもガストログラフィンは重積部を越え速やかに骨盤内回腸まで造影された.従って術後2日目からは飲水を開始したが嘔吐は認めなかった.喘息発作の改善を待って手術治療を予定していたが,呼吸状態の悪化により入院後24日目に他界された.なお,空腸腫瘍の生検結果は高分化型腺癌で肺転移を強く疑うものであった.【結論】肺癌の小腸転移は急性腹症として発症した場合は本来保存的治療のみでの改善は望めず,全身状態が許すならば姑息的手術治療の適応である.本症例では手術治療は選択できなかったが,内視鏡的処置を行い飲水まで可能となったことからQOL改善には貢献できたと考えている.なお学会当日は文献学的考察も加えて発表したいと考えている.
索引用語 転移性空腸腫瘍, 腸重責