セッション情報 一般演題

タイトル 055:

小網脂肪織炎の1例

演者 神谷 賢吾(医療法人社団以心会 中野胃腸病院 消化器科)
共同演者 奥嶋 一武(医療法人社団以心会 中野胃腸病院 消化器科), 深尾 俊一(医療法人社団以心会 中野胃腸病院 消化器科), 安藤 拓也(医療法人社団以心会 中野胃腸病院 消化器科), 榊原 一貴(医療法人社団以心会 中野胃腸病院 消化器科), 林 久乃(医療法人社団以心会 中野胃腸病院 消化器科), 横田 広子(医療法人社団以心会 中野胃腸病院 消化器科), 伊藤 寛(医療法人社団以心会 中野胃腸病院 消化器科)
抄録 症例は49歳女性。2010年6月上旬より心窩部痛が出現し、発症後6日目に激烈な上腹部痛と背部痛が出現したため近医を受診した。同日当院紹介受診となり急性腹症の診断にて緊急入院となった。発熱は認めなかったが、血圧:84/50mmHgとショックバイタルであった。心窩部に強い圧痛を認めたが腹膜刺激症状はなかった。血液検査では白血球:7,900/μl、CRP:3.2mg/dlと軽度の炎症反応を認めた。腹部超音波検査は疼痛が強く実施不能であった。腹部CTでは胃体部小彎を中心に著明な壁肥厚を認め、周囲の脂肪織に強い濃度の上昇と索状影を認めた。上部消化管内視鏡検査では胃体部から胃角部の小彎から前壁に壁肥厚を疑わせるびまん性の隆起を認めた。粘膜面に異常はなかった。超音波内視鏡検査では第1から3層の境界は消失し、第4層の肥厚を認めた。確定診断のため胃壁肥厚部からボーリング生検を実施したが、軽度の炎症所見以外に特記すべき所見はなかった。以上より小網脂肪織炎と診断し、絶飲食、補液、プロトンポンプ阻害薬にて保存的治療を行った。疼痛が強いためペンタゾシンの頻回投与を必要とした。徐々に症状は軽快し、入院6日目に経口摂取を開始した。その後も経過良好にて入院18日目に退院となった。退院後も症状の再燃はなく、4ヶ月後のCTと上部消化管内視鏡検査で治癒を確認した。網脂肪織炎は自験例を含め本邦報告例は22例と比較的稀な疾患であるが、うち小網脂肪織炎は3例と非常に稀な疾患なため、文献的考察を加え報告する。
索引用語 小網脂肪織炎, 急性腹症