抄録 |
(症例)72歳男性 既往歴:B型慢性肝炎、肝硬変、痔核、輸血歴なし 平成24年9月26日に健康診断にて肝障害を指摘され、当院消化器内科を受診した。腹部エコー上S4にドップラーでは血流シグナルを認めない長径約29mm短径約17mmの低エコー域と腹部造影CT上動脈相で濃染し,平衡相で周囲肝実質より低吸収域となる腫瘍を認めた。以前よりB型肝硬変が指摘されており、腫瘍マーカー(AFP:209ng/mL、PIVKA-2:75mAU/mL)も陽性であったため、肝細胞癌と診断した。精査・治療目的にて同年11月腹部血管造影検査を施行したところCTA/CTAPにて肝S4にCTAにて高吸収、CTAPで低吸収の腫瘍を認めたためTAEを試みたが、栄養血管に対してマイクロカテーテル挿入が困難であったため中止となった。後日改めてCTAを施行したところ同病変は辺縁の被膜のみ淡く造影され、明らかな腫瘍濃染を認めなかったため検査のみ施行し終了した。その後経過観察のためEOB-MRI、造影エコー施行するも動脈相では中心部は造影されず辺縁の被膜のみ淡く造影される状態を呈し、kupper相では低吸収とCTAと同様の所見を呈したため、腫瘍の自然消褪が疑われた。また肝腫瘍の生検を試みたが、患者の協力が得られず、組織学的には確定できなかった。その後、AFP値およびPIVKA-2値は徐々に低下し、平成25年2月にはAFP:9.7ng/mL、AFP-L3%:0.5%、PIVKA-2:26mAU/mLと正常化した。また同病変は平成25年3月に施行したEOB-MRI上では動脈相およびkupper相ともに低吸収を呈した。以上より、肝S4に認めた肝細胞癌が肝動脈造影後に自然消褪したのではないかと考えられる症例を経験した。 |