共同演者 |
永瀬 寿彦(市立吹田市民病院 内科), 湯口 清徳(市立吹田市民病院 内科), 若松 周司(市立吹田市民病院 内科), 笹川 廣和(市立吹田市民病院 内科), 長谷川 大(市立吹田市民病院 内科), 奥田 悠季子(市立吹田市民病院 内科), 長生 幸司(市立吹田市民病院 内科), 黒島 俊夫(市立吹田市民病院 内科) |
抄録 |
症例:48歳男性,38℃台の発熱,感冒症状を主訴に当院内科受診した.血液検査から肝機能異常,ウイルス抗原陽性であり,B型急性肝炎と診断され入院となった.入院時現症:意識清明,眼球結膜黄染なし,眼瞼結膜貧血なし,心・肺雑音なし,腹部 平坦・軟 圧痛なし 腸蠕動音正常,下腿浮腫なし.性交渉は配偶者のみ.入院時検査成績:WBC:10000/μl(Neut:69.6%,Lym:17.9%),PLT:33万/μl,Alb:3.1g/dl,AST:246IU/l,ALT:339IU/l,T-bil:1.1mg/dl,CRP:1.65mg/dl,HBsAg(+),HBsAb(-),HBeAg(+),HBeAg(-),HBV DVA>9.1 log copies/ml,IgM-HBc 33.4S/CO,HBV genotype A.入院後経過:15年間シクロスポリン150mg/日を尋常性乾癬にて内服しておりトランスアミナーゼの改善認めなかったため,HBVのキャリア化の危険性があると考え,平成24年6月14日,入院しエンテカビル0.5mg内服を開始した.服薬開始後,トランスアミナーゼは減少傾向なく,約2週間後には最大でAST 597 IU/L,ALT 910 IU/Lと上昇傾向を示した.その間ウイルス量は順調に減少し,7月4日には5.1 log copies/mlと減少していた.その後自然経過にてトランスアミナーゼは減少傾向示し,7月19日AST 94 IU/L,ALT 288 IU/Lと沈静化し退院となった.その後は外来にて再活性化予防のため,エンテカビル継続し採血フォロー行っているが,HBV DNAは陰性で,トランスアミナーゼも再上昇していない.考察: B型肝炎でウイルス量が多い場合に,エンテカビル投与後,一過性にトランスアミナーゼの上昇を認めるケースがある.HBVは宿主の自然免疫を抑制し免疫寛容を誘導するが,ウイルス量減少に伴って寛容状態が破綻する.本症例は,シクロスポリン内服中にB型急性肝炎を発症した症例であるが,入院当初は免疫抑制剤の影響で肝障害が軽度にとどまっていたと考えられる.ウイルス量は高値で,エンテカビル投与後にトランスアミナーゼが上昇したが,これは上記の報告と一致する.今後も免疫抑制剤の影響で再活性化の危険があるため,エンテカビルは内服継続が必要と考えている. |