共同演者 |
末包 剛久(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 上野 綾子(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 若原 佑平(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 丸山 紘嗣(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 平松 慎介(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 山崎 智朗(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 平良 高一(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐々木 英二(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐野 弘治(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 根引 浩子(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐藤 博之(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 中井 隆志(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 川崎 靖子(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 木岡 清英(大阪市立総合医療センター 肝臓内科) |
抄録 |
【症例】60歳代男性【主訴】下痢、腹痛、体重減少【既往歴】特記事項なし【現病歴】某年3月中旬から下痢と食後の腹痛、嘔吐が出現し、2ヶ月で10kg以上の体重減少を認めた。近医を受診し、腹部CT検査で上行結腸に腫瘤性病変を指摘されたため、5月に精査加療目的に当科を紹介受診となり、Alb1.6g/dlと著明な低栄養状態であったため精査加療目的に入院となった。【入院経過】腹部造影CT検査では、肝弯曲部に著明な大腸の壁肥厚が認められた。他に結腸および小腸にも数ヶ所の壁肥厚が散見され、腹水の貯留も認められた。下部消化管内視鏡検査では、肝弯曲部に狭窄を伴う全周性の浅い潰瘍性病変がみられたが、上皮性変化に乏しく内視鏡の通過は可能であった。他に横行結腸に2ヵ所の潰瘍性病変が認められた。生検組織による病理診断では、中型の核をもつ異型細胞のびまん性増殖を認め、免疫組織学的にCD20(-), CD3(+), CD4(-), CD8(+), CD56(+), CD5(一部+), GranzymeB(+), TIA-1(+), Ki-1(-)であり、EB virusのEBER-ISHでは陽性像は確認されなかった。以上より、type II enteropathy-associated T cell lymphoma(EATL)と診断した。なお、上部消化管内視鏡検査では、十二指腸下行部にKerckring襞の消失を伴う粗造な発赤調粘膜が区域的に認められ、絨毛構造も不明瞭化していた。同部からの生検組織でも大腸と同様の病理結果が得られた。診断後、加療目的に血液内科へ転科となり、化学療法(CHOP療法など)が行われたが、十分な治療効果が得られず緩和医療へ移行となった。【考察】腸管原発悪性リンパ腫はB細胞系由来のものが多く、T細胞系由来のものは稀である。その中でもEATLはT細胞リンパ腫全体の5%未満に過ぎず、本邦を含むアジアでは特に頻度が少ない。病変は空腸、回腸に多く、細胞障害性のリンパ腫細胞により深い潰瘍や穿孔をきたしやすい。いまだ有効な治療法が確立されておらず、5年生存率20%以下と予後不良な疾患である。【結語】今回当院では、稀な疾患であるEATLの1例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。 |