セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F4-6:

腫瘍マーカー高値を契機に発見された異所性肝細胞癌の1例

演者 工藤 慎之輔(大阪労災病院 消化器内科)
共同演者 法水 淳(大阪労災病院 消化器内科), 岡原 徹(大阪労災病院 消化器内科), 中村 昌司(大阪労災病院 消化器内科), 鈴木 麻菜(大阪労災病院 消化器内科), 末吉 弘尚(大阪労災病院 消化器内科), 吉井  俊輔(大阪労災病院 消化器内科), 有本 雄貴(大阪労災病院 消化器内科), 平尾 元宏(大阪労災病院 消化器内科), 山本 俊祐(大阪労災病院 消化器内科), 佐藤 雅子(大阪労災病院 消化器内科), 小森 真人(大阪労災病院 消化器内科), 吉原 治正(大阪労災病院 消化器内科)
抄録 症例は34歳女性。2011年5月に近医の定期検診にてAFP異常高値を認め、当科を紹介受診した。症状特になく、胸腹部に異常所見も認めなかった。血液検査にてAFP:586 ng/ml、PIVKA-2:181 mAU/mlと腫瘍マーカーの高値を認めたが、AST、ALT等の肝酵素は正常、ウイルスマーカーも陰性であり、飲酒歴もなかった。造影CTでは左横隔膜下に胃大彎と接する径26mmの腫瘤が指摘され、肝と腫瘤の連続性は認められず肝腫瘍は否定的であった。肝臓内には腫瘤性病変は認めず、消化管の肝様癌、GIST等の可能性を考え、上部消化管超音波内視鏡検査を施行したが、腫瘤は胃壁外よりの発生であり可能性としては副脾や腹腔内GISTが考えられた。FDG-PETでは腫瘤に集積を認めず、MRIを施行するも確定診断に至ることはできなかった。その後腫瘤の増大傾向は無く、全身状態は良好、明らかな自覚症状も無いため、外来にて経過を観察していた。しかし2012年1月に施行した造影腹部CTにて肝から腫瘤に入り込む脈管、及び腫瘤の早期濃染、後期wash outの所見、さらにEOB-MRIでは肝細胞造影相での腫瘤の低信号域を認め、PIVKA-2:559 mAU/mlと腫瘍マーカーの上昇も見られたため、肝細胞癌の可能性が高いと考えた。当院外科にて腹腔鏡下腫瘤及び肝S2部分切除術を施行した。腫瘤は肝外側区域と線維性結合織で連絡するも、肝組織との連続性は認められなかった。術後病理診断にて異所性肝細胞癌との診断を得た。術後にはAFP:2 ng/ml未満、PIVKA-2:21 mAU/mlと低下し、経過良好にて退院となった。異所性肝は発生における肝臓の異常と考えられるが、その頻度は非常に低く、この異所性肝から発生した癌(異所性肝細胞癌)の頻度は更に低いと考えられ、文献的に検索しえた報告例は自験例を含め40例であった。このように非常に稀である異所性肝細胞癌の一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて症例報告とする。
索引用語 異所性肝細胞癌, 腫瘍マーカー