セッション情報 シンポジウム1「消化器診療におけるイノベーション」

タイトル S1-3:

消化管穿孔に対する新たなイノベーション-内視鏡的組織被覆法(Endoscopic Tissue Shielding)

演者 滝本 見吾(武田総合病院 消化器センター)
共同演者 松山 希一(武田総合病院 消化器センター)
抄録 早期消化管癌の標準治療法となったESDは、侵襲の大きな手術を回避できる画期的な方法ではあるが、偶発症である穿孔を一度起こすと緊急手術になることや重篤な状態になることも経験する。穿孔径が小さな場合、クリップ縫縮で事なきを得ることも多いが、径が大きい場合、穿孔部周囲の筋層は脆弱であることから、クリップで潰瘍底を縫縮することは非常に困難であり、筋層が薄い場合にはクリップ先端で穿孔部を拡大させることも経験する。また縫縮が可能であっても数日後にクリップが外れることも多く経験した。そこで、クリップを用いずに穿孔部に組織を被覆することがより簡便で確実ではないかと考え、内視鏡的組織被覆法を考案した。同方法は、口腔癌手術や肺癌手術時の組織欠損部の修復に使用されているポリグリコール酸(PGA)シート(ネオベール®;グンゼ社)とフィブリン接着剤(ベリプラストPコンビセット®;CSLベーリング社)の併用法を応用する事を考えた。 ネオベール® は、手術で使用する縫合吸収糸などで広く使用されているシート状の補強材であり、1992年より人工胸膜として人体に使用され、現在でも肺癌手術後の約4割の患者に使用されている。同シートを短冊状に切ることにより、内視鏡下でのdeliveryを容易にした。 ベリプラストPコンビセット® は加熱血液製剤で、血液の凝固作用を応用した生理的な組織接着剤である。使用方法としては、PGAシートで穿孔部を被覆し、その上から組織接着剤を散布する方法を選択した(Endoscopy,in press)。当院倫理委員会承認のもと患者に同意を得て同方法を行った。当院では、十二指腸ESD術中術後の穿孔、大腸ESD術中穿孔、直腸膀胱瘻の閉鎖、食道の亜全周切除後の狭窄予防、胃ESD遅発性穿孔、術中巨大穿孔などで臨床研究として使用し、良好な成績であった。今後、同方法は簡便かつ安全な方法であり、今後、内視鏡治療において様々な応用が可能な方法と考え今回報告する。
索引用語 ESD, 消化管穿孔