セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル Y3-2:

HIV・CMV初感染時に直腸・肛門部潰瘍をきたした1例

演者 橋本 佳愛子(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院)
共同演者 西村 聡(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 渡邊 幸太郎(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 木村 典世(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 牟田 優(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 廣橋 研志郎(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 西川 義浩(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 渡辺 昌樹(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 加藤 洋子(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 工藤 寧(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 小田 弥生(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 山内 淳嗣(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 藤田 光一(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 吉野 琢哉(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 高 忠之(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 大橋 真也(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 浅田 全範(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 福永 豊和(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 川口 清隆(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院), 八隅 秀二郎(財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院)
抄録 【症例】17歳男性【主訴】発熱, 粘血便, 肛門部痛【現病歴】39℃台の発熱・下腹部痛・粘血便が出現し, 近医を受診。感染性腸炎疑いでラクトミン製剤とホスホマイシンを投与されたが発熱および粘血便が持続したため, 潰瘍性大腸炎の疑いでサラゾスルファピリジンを投与開始された. しかし, 39℃台の発熱と1日6回程度の粘血便が持続したため当院に紹介となった. 【既往歴】HTLV-1キャリア【家族歴】母方祖父・母; HTLV-1キャリア, 母方祖父; 肺結核にて治療中 【初診時検査所見】AST: 44, ALT: 50, CRP: 0.83, Hb: 15.5, WBC: 40. 腹部造影CTにて直腸から上行結腸腸管壁の浮腫状肥厚, 直腸周囲後腹膜腔の脂肪織濃度上昇・周囲リンパ節腫脹を認め, 下部消化管内視鏡検査にて直腸にアフタ様びらん~打ち抜き様潰瘍の多発を認めた. 【経過】アメーバ腸炎疑いにてメトロニダゾール内服を開始するも発熱持続し入院となった. 結核に対する喀痰培養・QFT・組織PCR検査はいずれも陰性であった. 抗生剤(メトロニダゾール・CTRX)投与にて一時解熱するも, その後2峰性の発熱を認めた. 血液検査からCMVとHIVの初感染・CD4陽性リンパ球数<350であることが判明した. 初診時の直腸潰瘍からの生検にて抗CMV抗体陽性細胞が血管内皮細胞や間質に認められ, 生検組織PCRでもCMV-DNA陽性, 血液中にC7-HRP陽性細胞(13/50000)が認められ, ガンシクロビル内服開始とした. C7-HRP陽性細胞の陰性化と直腸・肛門部潰瘍の改善を認めたが, 発熱は持続し, 下肺野の多発粒状影が認められ, 粟粒結核と診断され, HRZE療法にて速やかに解熱した. 【考察】HTLV-1キャリアの患者にCMV+HIV直腸炎に引き続き粟粒結核を発症した1例を経験した. HIV初感染時には一時ウイルス量の増加に伴い, CD4リンパ球の著明な減少を認める. また, 特にHTLV-1とHIVの共感染においてはHIV単独感染時と比較し, CD4リンパ球に対するHIVウイルス量が高値で, 病状の進行が早いことが知られている. そのため, 本症例においても, HTLV-1キャリアにHIVが初感染したことで, 免疫能の低下が助長され, 特異な経過をたどったものと思われた.
索引用語 HIV感染, 直腸潰瘍