セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル Y6-5:

診断に苦慮した穿孔を伴った出血性胆嚢炎の1例

演者 竹谷 祐栄(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 消化器科)
共同演者 福本 晃平(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 消化器科), 北村 陽子(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 消化器科), 田中 斉祐(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 消化器科), 大野 智之(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 消化器科), 山里 有三(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 外科), 長田 寛之(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 外科), 望月 聡(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 外科), 伊藤 範朗(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 外科), 藤野 光廣(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 外科), 北井 祥三(市立奈良病院 消化器肝臓病センター 外科)
抄録 【症例】60歳代、男性【既往歴】慢性心房細動と心原性脳塞栓症にて抗凝固薬を内服中、胃潰瘍にて幽門側胃切除後・Billroth II法再建後【現病歴】1週間持続する発熱と腹痛を主訴に前医へ入院となり、保存的加療により炎症反応の改善を得られたが、黄疸・黒色便が出現したため、前医へ入院後3日目に精査・加療目的に当院へ転院となった。【入院時現症】体温37.2℃、血圧122/80mmHg、脈拍81回/分、結膜貧血・黄染あり、腹部平坦・軟、右季肋部に圧痛認め、Murphy徴候陽性であった。【血液検査】WBC 7510/μl、Hgb 5.4g/dl、 Plt 12.9万/μl、AST 226IU/L, ALT 232IU/L、T-Bil 15.2mg/dl、PT 3%【CT検査】前医のCT上、胆嚢はhigh densityで一塊として描出され、総胆管内と腹腔内にhigh densityなdebris様の陰影を認めた。【経過】出血性胆嚢炎または胆嚢癌からの出血による閉塞性黄疸・血性腹水を来したと考えた。当院に入院後2日目にPT 44%と凝固能の改善が得られた段階でERBDを施行した。ERBD時に血腫や胆管癌を疑う透亮像を上部胆管に認めた。減黄・炎症反応の改善良好であり、入院後9日目以降に診断のために腹部エコー、CT、MRIを施行した。胆嚢に認められたhigh densityは消褪し、胆嚢壁は均一に描出され明らかな腫瘤形成を認めず、胆嚢頸部と思われる部位に胆石を認めた。以上より胆嚢癌は否定的と考え、出血性胆嚢炎と診断した。入院後20日目にERCを行い、上部胆管の透亮像の消失と胆管内に結石を認めないことを確認した。後日、開腹胆嚢摘出術を施行したところ、大網が肝右葉下縁および肝十二指腸間膜、十二指腸、横行結腸左側を覆うようにして強固に癒着しており、胆嚢壁外に被包化された数ミリ大の黒色胆石を認めた。胆嚢は体部で穿孔し、結腸間膜に被覆されていた。【考察】本症例は胆石による急性胆嚢炎を来し、抗凝固薬による凝固能異常から出血性胆嚢炎を併発した。さらに胆嚢体部で穿孔したため、胆嚢内外および癒着した腹腔内で血腫を形成し、腫瘍様の画像所見を呈し、診断に苦慮したと考えられた。
索引用語 出血性胆嚢炎, 穿孔