セッション情報 一般演題

タイトル 54:

閉塞性黄疸を認め治療に難渋した出血性肝嚢胞の1例

演者 小野  洋嗣(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科)
共同演者 木村 佳人(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科), 山下  幸政(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科), 孫 永基(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科), 丸尾 正幸(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科), 板井 良輔(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科), 池田 英司(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科), 高田 真理子(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科), 三上 栄(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科), 住友 靖彦(神戸市立医療センター西市民病院 消化器内科)
抄録 症例は79歳女性。平成23年4月中旬に右季肋部から右下腹部にかけての疼痛を自覚したため当院を受診。血液検査で、AST 330 U/L、ALT 300 U/L、γ-GTP 814 U/L、ALP 3932 U/L、T-Bil 4.8 mg/dlと肝胆道系酵素の上昇を認め、腹部CT・腹部エコーにて肝門部に径12cm×14cm大の嚢胞を認めた。内部には不均一なdensityが混在し出血の含有が疑われ、また両葉の肝内胆管の拡張も認めており、閉塞性黄疸を伴う出血性肝嚢胞と診断し入院となった。入院後2回の嚢胞穿刺を施行し暗赤色の血性排液を認めたが、凝血塊のため排液は少量でいずれも肝胆道系酵素の改善は一時的であり、嚢胞の再増大を認めた。嚢胞内への出血が持続していると考え腹部血管造影を施行したが、嚢胞内に出血を来たすような血管病変は指摘できなかった。嚢胞内に経皮的ドレナージチューブを留置し持続排液を行ったが、肝機能は改善し肝内胆管拡張も消失したが、嚢胞径は10cm×10cm大の縮小に留まった。Monoethanolamine Oleate(Oldamin®)の注入による肝嚢胞硬化療法を施行し、6月上旬に退院となった。しかし退院後の6月下旬のCTでは、再度嚢胞の径が12cm×13cmと増大を認め、肝機能障害も再燃したため内科的治療ではコントロール不良と考え手術の方針となった。同年8月に、腹腔鏡下嚢胞開窓術を施行した。嚢胞内部には大量の凝血塊を認めたが、明らかな出血源と考えられる血管は不明のため、出血の可能性のある血管に対して焼灼凝固を施行した。その後の経過は良好であり、症状の再燃、嚢胞径の増大、肝胆道系酵素の上昇等を認めずに経過している。出血性肝嚢胞は比較的稀な疾患とされており、その頻度は単純性肝嚢胞の10%以下とされるが、肝内胆管の圧迫による閉塞性黄疸を来たした例は極めて稀である。今回、我々は興味深い経過をたどった出血性肝嚢胞の1例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 出血性肝嚢胞, 開窓術