セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F4-7:

興味ある成長発育過程を示した肝細胞癌と胆管細胞癌の同時性重複癌の一例

演者 渡部 晃一(社会保険神戸中央病院)
共同演者 藤原 晃(社会保険神戸中央病院), 安藤 通崇(社会保険神戸中央病院), 婦木 秀一(社会保険神戸中央病院), 山内 徳人(社会保険神戸中央病院), 西林 宏之(社会保険神戸中央病院), 安田 光徳(社会保険神戸中央病院)
抄録 【症例】70代男性.【主訴】心窩部不快感,げっぷ.【既往歴】高血圧症,狭心症,アルコール性肝障害.【現病歴】2012年4月主訴の精査目的で受診し,胃幽門部過形成性ポリープによる症状と判明した.初診時の血液検査にてCA19-9が高値であり,腹部造影CT検査で肝腫瘍を認めたため,精査加療目的で入院となった.【臨床経過】血液検査では,軽度の肝障害と血小板減少を認め,CA19-9 478.6 U/ml,PIVKA2 2640 mAU/mlと腫瘍マーカーの上昇を認めた.腹部ダイナミックCT検査では,肝左葉外側区に被膜を伴う結節型腫瘍を認め,これと接して内側区に塊状型の腫瘍を認め,前者は早期濃染とwash outを伴い肝細胞癌を示唆する所見であり,後者は辺縁から中心に向かって徐々に造影されていくパターンを呈し,混合型肝癌やPeliotic changeを伴った肝細胞癌,2種類の肝腫瘍の合併などが鑑別に挙がった.経皮的肝腫瘍生検を行い,免疫染色等検討した結果,前者は肝細胞癌,後者は胆管細胞癌と診断された.大動脈周囲リンパ節転移が疑われるため手術適応は難しく、患者と相談し内科的に治療を行う方針とした.最初に,肝細胞癌に対して肝動脈化学塞栓療法を実施した.次に胆管細胞癌に対して,TS-1による全身化学療法を選択し,現在まで外来通院にて継続治療中である.【考察】今回の検査所見のみでは,混合型肝癌か重複癌かの判別は困難であった.しかしながら,本症例は以前に肝血管腫としてフォローされ,患者の自己判断で通院が途絶していた経緯があり,当時の画像所見を後方視的に検討することによって,本症例が重複癌であることが強く示唆された.第18回全国原発性肝癌追跡調査では重複癌の項目がなく,おそらく混合型肝癌のなかに重複癌が含まれていると推察され,重複癌単独の頻度は不明であるが,非常に稀と考えられている.【結語】非常に稀な肝細胞癌と肝内胆管癌の重複癌と考えられる一例を経験した.経時的な画像検査により,腫瘍の成長発育過程が追え,示唆に富む一例と考えられた.
索引用語 原発性肝癌, 重複癌