共同演者 |
沢井 正佳(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科DELIMITER奈良県立医科大学 中央内視鏡・超音波部), 古川 政統(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 山尾 純一(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科DELIMITER奈良県立医科大学 中央内視鏡・超音波部), 豊原 眞久(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 田原 一樹(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 波崎 正(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 高谷 広章(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 錦織 麻衣子(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 森岡 千恵(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 吉田 太之(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 美登路 昭(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 吉冶 仁志(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科), 福井 博(奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝内科) |
抄録 |
【症例】66歳,男性【主訴】腹部膨満感,下痢【既往歴】40歳時より高血圧,50歳時より糖尿病にて加療,59歳時左膝関節骨折【現病歴】下咽頭癌に対して,2011年11月8日~2012年1月10日の間,当院耳鼻咽喉科で化学放射線療法を施行された.治療経過中に放射性粘膜炎に伴う感染があり,治療後には誤嚥性肺炎を併発したため,CFPM,DRPM,SBT/ABPC,LVFXなどの抗菌薬が投与された.2月中旬頃より下痢が出現, Clostridium difficile (CD) toxin A/B陰性,CD培養陽性,Colonoscopyで偽膜形成を認め, CD陽性偽膜性大腸炎と診断された.2月24日より,塩酸バンコマイシン(VCM)の投与を行ったところ自覚症状や白血球数およびCRP値の改善を認め,便CD toxin A/B陰性,CD培養陰性を確認して3月11日に退院させた. 退院後1週間は順調であったが,3月19日より下痢、嘔気が出現.3月20日には下痢や嘔気は一旦軽減したが,3月21日夜間より腹部膨満感,38度台の発熱,3月22日からは呼吸苦も出現したため同日,当科を受診し,緊急入院となった. 【入院後経過】38度台の発熱と血圧低下(74/37mmHg), 末梢血WBC数22700/μl,CRP28.4と高度な炎症所見を認め,敗血症性ショック状態と判断して昇圧剤投与を行った.CT検査で大腸は径6cm以上と著明に拡張し,中毒性巨大結腸症と診断し,外科的手術を検討したが,ARDSを併発するなど多臓器不全の状態にあり施行できなかった.便CD toxin A/B陽性でCD感染による偽膜性大腸炎の再燃と考え,メトロニダゾールの投与を行ったが多臓器不全のため入院第2病日に死亡した.剖検では,大腸は著明に拡張し,全域に偽膜形成と巨大結腸を認めたが,腸管壊死や穿孔はみられなかった.死因は,bacterial translocationによる敗血症性多臓器不全と考えられた.【考察】偽膜性大腸炎と中毒性巨大結腸症の合併はまれである.一旦軽快した後に急速に増悪して不幸な転帰をとるという特異な経過を辿った偽膜性大腸炎の1剖として,若干の文献的考察を加えて報告する. |