セッション情報 ワークショップ2「食道癌の集約的治療の新たな展開」

タイトル W2-2:

表在食道癌に対する化学放射線療法の治療成績

演者 林 義人(大阪大学 医学部 消化器内科)
共同演者 西田 勉(大阪大学 医学部 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学 医学部 消化器内科)
抄録 【背景】近年、内視鏡検査の普及やNBIなどのImage Enhanced Endoscopyの進歩もあり、表在食道癌の発見は増加してきている.特に粘膜内癌に対しては内視鏡下粘膜下層剥離術の一般化に伴い,臓器温存に貢献を果たしている.一方,粘膜下層浸潤癌に対しては,手術療法が標準治療であるが、手術関連死亡や術後合併症の問題から、侵襲の少なく臓器温存目的で化学放射線療法が選択される場合も増加してきている。【目的】表在食道癌(cT1bN0M0stageI)に対して化学放射線療法を施行した症例について,その有用性を明らかにする.【方法】2006年2月より2011年7月までに,内視鏡検査,超音波内視鏡検査,胸腹部CT検査,PET-CTを行い,組織学的に扁平上皮癌と診断された食道癌(cT1bN0M0stageI)55例に対して根治的化学放射線療法(5FU+CDDP療法+放射線療法60Gy予防照射なし)を行った.治療効果について検討した.【結果】平均年齢は66歳,観察期間中央値は38ヵ月,治療完遂率は96%であった.治療成績は,CR率は88.9%,4年累積生存率は86.0%,4年累積無再発率は72.7%であった.CRを得られなかった6症例に対しては,手術(3例),化学療法(2例),内視鏡治療(1例)を施行し,3人が生存中である.CR後再発をした患者は8例で,内訳はリンパ節転移6例,局所再発2例であった.局所再発に対しては内視鏡治療,リンパ節転移に対しては,3例に手術療法,3例に化学療法を施行し、うち化学療法施行2例が死亡した.grade3以上の毒性として,好中球減少8例,血小板減少1例,嘔気3例,粘膜障害3例を認めた。晩期合併症は,肺炎1例,心嚢液貯留3例に認めたがいずれも保存的加療により軽快した.ヒストリカルコントロールとして当院におけるcT1bN0M0食道癌に対する手術成績(67症例,平均年齢63歳,観察期間中央値53ヶ月)は,4年累積生存率80%,4年累積無再発率84.2%であった.【考察】表在食道癌に対する化学放射線療法は、累積無再発率において手術療法に劣るものの,適切なsalvage療法により,手術症例と同等の生存率を得られた.臓器温存によるQOLの維持の観点から,有効な治療法として選択肢の一つと考えられる.
索引用語 食道癌, 化学放射線療法