抄録 |
【目的】当科では龍谷大学工学部システム工学科(大塚尚武教授)と共同で,磁場を利用する自走式CE(self-propelling capsule endoscope:以下SPCE)の開発に取り組んできた.これまでに犬の生体胃内をSPCEが自走し,リアルタイム観察が可能になったことを報告した.ヒトの胃や大腸内においてもSPCEによる観察が可能であることを学会報告した.1.1つのカプセルで経口的に内服し食道から大腸まで全消化管の観察を行うこと,2.経肛門的に挿入して逆行性に進ませ,全大腸の観察をすること,以上の2つの目標に対してSPCEの開発実験を行っている.SPCEの現況について報告する.【方法】SPCEはCEの端に磁石を内蔵するヒレを取り付けた構造である.交流磁場を与えることでヒレを動かし推進力を与えるとともに,磁場の波形を制御することにより方向や速度を自由自在に制御できる.大きさは,経口法用が12×45mm,経肛門用が12×65mmであり,ヒレはシリコン樹脂製である.1.全消化管の観察:polyethylene glycol(PEG)2Lによる前処置を行った.SPCEを嚥下後,胃内に到達した後に飲水500mlを行い,胃内の観察を行った.その後右側臥位にてSPCEを幽門輪へ誘導し,十二指腸から小腸の観察を行った.大腸のより良好な観察と拡張を得るため,SPCEが盲腸へ到達してからPEG 1Lの追加し,リアルタイム観察下で大腸へPEGの到達が得,大腸の観察を行った.2.逆行性大腸の観察:大腸内視鏡と同様の前処置.被験者を左側臥位とし,SPCEを肛門より大腸内に挿入後,注水1Lを行い,自走観察を開始した.【結果】1.胃内の観察を行った後,小腸の観察を行った.SPCEの小腸通過時間は2時間22分10秒で特に合併症はみられなかった.大腸においてはヒダの影響かやや動きが不良であった.今回の実験において,小腸の通過が安全にできたことは今後全消化管の観察を目標とするうえで非常に有用な結果であった.現段階ではまだまだ改善の余地があり,今後全消化管の観察に向けて更なる検討を重ねる必要があると考えられた.2.SPCEを経肛門的に逆行自走させ,大腸内の観察に世界で初めて成功した.さらなる前処置方法の改良が重要であると考えられた. |