セッション情報 一般演題

タイトル 51:

甲状腺眼症に対するステロイドパルス療法中に発症した自己免疫性肝炎の一例

演者 川西  祥宏(公立南丹病院 消化器内科)
共同演者 鄭 哲臣(公立南丹病院 消化器内科), 井上 香織(公立南丹病院 消化器内科), 辰巳 陽一(公立南丹病院 消化器内科), 金政 秀俊(公立南丹病院 消化器内科)
抄録 症例は62歳,男性.既往歴は特になし.2012年2月ごろより複視が出現したため4月に当院眼科を受診.MRIで外眼筋の腫大を認め,TRAb高値,TSH低値より甲状腺眼症と診断された.その際の検査でAST/ALT 20/24 IU/Lであった.甲状腺ホルモンは軽度異常にとどまることから無投薬で経過をみられた.甲状腺眼症に対し5月よりメチルプレドニゾロン1gを3日間投与し4日間休薬するステロイドパルス療法を3回行われた.その期間中にトランスアミナーゼの上昇は認めなかったが,終了3週後にAST/ALT 130/323 IU/Lと上昇していた.視覚異常や外眼筋の腫大は軽快するも残存し,本人の希望も強く6月より再度ステロイドパルス療法を1回行われた後,肝障害のため当科紹介となった.視覚異常以外の自覚症状はなく,血液検査でAST/ALT 79/261 IU/L,T-Bil 0.9 mg/dl,PT 104 %,肝炎ウイルスマーカーは陰性で,IgG 999 mg/dl,抗核抗体 40倍,甲状腺ホルモンは正常範囲であった.睡眠薬や健康食品を内服していたことから,薬剤性肝障害を疑い内服中止を指示し経過観察した.7月にAST/ALT 56/110 IU/Lと改善していた.さらに2回のステロイドパルス療法を行われた.終了直後のAST/ALT 40/131 IU/Lで,4日後のAST/ALT 92/254 IU/Lであった.自覚症状はなく経過観察としたところ,8月より食思不振と全身倦怠感が出現したため受診.AST/ALT 1739/2400 IU/L,T-Bil 3.3 mg/dl,PT 55 %と著明な肝機能障害を認め入院となった.再度行った肝炎ウイルスマーカーはいずれも陰性であった.IgG 1230 mg/dl,抗核抗体は40倍,抗平滑筋抗体と抗LKM-1抗体は陰性であったが,入院翌日に行った肝生検組織で,interface hepatitisと肝実質内の壊死を認め,自己免疫性肝炎と診断し,プレドニゾロン40mgで治療開始した.肝機能は速やかに改善,現在外来経過観察中である.ステロイドパルス療法中に発症した自己免疫性肝炎は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
索引用語 自己免疫性肝炎, ステロイドパルス