セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F1-8:

麻痺性イレウスに発症した腸管嚢腫気腫症の一例

演者 北川 彰洋(川崎病院 消化器内科)
共同演者 竹内 庸浩(川崎病院 消化器内科), 青木 領太(川崎病院 消化器内科), 西田 悠(川崎病院 消化器内科), 野村 祐介(川崎病院 消化器内科), 前田 哲男(川崎病院 消化器内科), 多田 秀敏(川崎病院 消化器内科), 井上 善文(川崎病院 外科)
抄録 【症例】70歳女性【主訴】嘔吐,発熱【既往歴】33歳時より統合失調症で数種類の向精神病薬を内服中.腹腔鏡下胆摘術と麻痺性イレウスの既往がある.【現病歴】統合失調症で精神科入院中.2012年4月中旬より頻回の嘔吐が出現し,輸液にて経過をみていたが40℃発熱が出現.精査目的で4月25日に当院紹介入院.【現症】身長 140cm.体重 48kg.腹部 著明な膨部膨隆を認めるが,圧痛や腹膜刺激症状はなかった.鼓音を聴取.Performance Statusは3.【検査所見】WBC 15,900/μl, RBC 486万/μl, Hb 15.6g/dlと高値.AST 137IU/L, ALT 88IU/L, LD 480IU/L, Na 152mEq/l, Glu 153mg/dlと高値であった.CRP 0.3mg/dlと正常範囲内.【腹部CT】腹腔内に多発性にfree airを認めた.腸管,特に小腸が拡張し,腸壁内にガスを輪状,紐状に認めた.【経過】腸管嚢腫気腫症も鑑別に挙がったが,消化管穿孔も否定できず,診断および治療目的に緊急手術を施行することとなった.手術所見で,上下腹部正中切開により開腹し,著明に拡張した小腸を認め,特にトライツ靭帯より120~200cmの回腸が拡張していた.腹水は認めなかった.腸間膜内に多量の気腫を認めたが,腸管の穿孔は明らかではなかった.手術所見より,腸管嚢腫気腫症と診断し,腸管減圧目的に回腸瘻を造設した.同時に胃瘻も造設した.術後より腹部膨満を認め,術後5日目腹部X線で腸管内に多量のガスを認めた.絶食・ジノプロスト持続投与により経過をみたが改善傾向なく,経鼻胃管・イレウスチューブにより減圧を行った.以後,良好に減圧でき,術後20日目より経管栄養を開始した.以後経過良好で,術後59日目に軽快退院した.【まとめ】腸管嚢腫気腫症は,腸管壁内に多数の嚢腫様気腫を形成する疾患で,特に回腸に多く発症することが報告されている.腸管内圧の上昇により腸管内ガスが粘膜の微細な損傷部位より腸管壁内に進入し,気腫をきたすという機序が考えられている.本例では,向精神病薬服用中により慢性的な麻痺性イレウスの状態であり,腸管内圧の上昇により腸管嚢腫気腫症を発症したと考えられた.
索引用語 腸管嚢腫気腫症, 麻痺性イレウス