セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F2-4:

治療に難渋した妊娠時再燃潰瘍性大腸炎の1例

演者 谷口 隆介(京都府立医科大学附属病院 卒後臨床研修センター)
共同演者 保田 宏明(消化器内科学), 辻 俊史(消化器内科学), 岡山 哲也(消化器内科学), 吉田 直久(消化器内科学), 鎌田 和浩(消化器内科学), 堅田 和弘(消化器内科学), 内山 和彦(消化器内科学), 十亀 義生(消化器内科学), 半田 修(消化器内科学), 高木 智久(消化器内科学), 石川 剛(消化器内科学), 阪上 順一(消化器内科学), 小西 英幸(消化器内科学), 八木 信明(消化器内科学), 古倉 聡(消化器内科学), 内藤 裕二(消化器内科学)
抄録 症例:30代女性。主訴:排便回数増加、顕血便。現病歴:2004年に左側大腸炎型潰瘍性大腸炎を発症。その後は、メサラジン服用で症状は安定していた。2012年1月(妊娠2週目)より、嘔気、低アルブミン(Alb)血症の進行、排便回数増加、顕血便が持続し、2012年2月に潰瘍性大腸炎(重症)の再燃として当科入院となった。入院後経過:妊娠中ということで、G-CAP併用で経過観察としたが低Alb血症が進行し、7日目より完全経静脈栄養療法(TPN)を開始した。しかし、症状の改善なく、G-CAP後の発熱のために、計6回行い中止。絶食・TPNで経過観察としたが貧血の程度のわりに、低Alb血症が進行するため、蛋白漏出性胃腸症の合併が疑われた。13日目にステロイド静注療法(60mg/日)を開始したが、改善なく、漸減中止、35日目にインフリキシマブ(IFX)投与を開始。3回目投与(76日目)後から全身状態は徐々に改善し、137日目より流動食を開始した。222日目(妊娠41週0日)に出産、229日目にIFX5回目の投与を行い、出産後、低Alb血症、貧血は徐々に正常化した。また232日目の大腸内視鏡検査(CF)では横行結腸に狭窄、浮腫は残存するものの粘膜粗ぞうを認めるのみで粘膜治癒は得られていた。57日目のCF時に大腸粘膜からサイトメガロウイルス(CMV)-DNA(PCR法)が検出され、また入院時は陰性であったCMVアンチゲネミアが124日目に陽性となったが、内視鏡所見からはCMV腸炎を疑えず、治療は行わなかった。考察:IFX投与後、症状の改善を認めたが、妊娠を契機に悪化し、出産後に改善した症例とも考えられた。IFXによる新生児の免疫力低下を憂慮し、IFX最終投与後2ケ月以上あけての出産を計画し、出産後速やかに投与再開とした。入院前にCMV-IgGが陽性であったことから、ステロイド投与によりCMVが再活性化したことが危惧され、CMV感染による胎児の症状として巨細胞封入体症などの報告があることから、妊婦へのステロイド治療は慎重を期すべきと考えられた。妊娠時に潰瘍性大腸炎が再燃し、治療に難渋した1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, インフリキシマブ