セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F4-4:

IFN治療により根治を得た肝リンパ漏の1例

演者 藤原 智慧(医療法人宝生会 PL病院 内科)
共同演者 福田 勝彦(医療法人宝生会 PL病院 内科), 中山 佐容子(医療法人宝生会 PL病院 内科), 岡崎 博俊(医療法人宝生会 PL病院 内科)
抄録 【症例】59歳女性【主訴】腹部膨満【既往歴】C型慢性肝炎 (47歳時に指摘され、IFN治療を受けるも副作用のため治療中止となった。HCV RNA 6.9 logIU/ml、genotype 1b) 【現病歴】平成18年3月に胃体下部の早期胃癌 (低分化型腺癌) を指摘され、同年4月に幽門側胃切除術を受けた。術後まもなくは経過良好であったが、徐々に腹部膨満が出現し、大量の腹水貯留が認められるようになった。利尿薬にて加療されるも改善に乏しく、同6月より内科共観となった。【経過】腹水はリバルタ反応陰性、蛋白4.6g/dlと滲出性であり、リンパ球優位の細胞増多を認めた。細胞診も陰性であり、臨床経過と合わせ胃癌術後の肝リンパ漏と診断した。そのため同月28日よりOK-432の腹腔内注入療法を開始し、適宜腹腔穿刺を施行しながら3カ月に1~2回、10KEずつ計14回投与した。当初は腹水の減少や食欲の改善を認めOK-432への反応は良好と考えられたが、次第に反応性が低下してきたため、より根治的な治療の導入が必要となった。肝リンパ漏の長期化は、慢性肝炎に伴う肝リンパ流の増加が最大の原因であることから、肝炎の鎮静化が肝リンパ漏の根治におけるキーポイントであった。しかし大量の腹水の存在下では慢性肝炎に対する抗ウイルス治療の導入は困難であったため、平成20年4月に腹腔-静脈シャントを導入し、腹水がほぼ消失したことを確認した上で、C型慢性肝炎に対し平成21年2月よりpegIFNα2b 80μg+ribavirinによる治療を開始した。48週間の治療後にはウイルスの持続陰性化が得られ、さらに腹水の再出現も認められなかった。以後慎重に経過観察し、平成23年2月にシャントを抜去したが、腹水の再出現なく現在まで経過は良好である。【結語】今回、IFN治療が奏功し、背景のC型慢性肝炎が治癒したことで肝リンパ漏が根治した症例を経験した。これまでに肝リンパ漏に対するOK-432の投与や腹腔-静脈シャント導入の報告は存在するが、検索した範囲内では肝リンパ漏に対しIFN治療が試みられた報告はない。本症例は肝リンパ漏の成因を考える上で非常に示唆に富む症例と思われるため、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝リンパ漏, IFN