共同演者 |
吉波 尚美(京都市立病院 消化器内科), 岡本 直樹(京都市立病院 消化器内科), 久野 寧子(京都市立病院 消化器内科), 高井 孝治(京都市立病院 消化器内科), 元好 貴之(京都市立病院 消化器内科), 西方 誠(京都市立病院 消化器内科), 山下 靖英(京都市立病院 消化器内科), 桐島 寿彦(京都市立病院 消化器内科), 新谷 弘幸(京都市立病院 消化器内科) |
抄録 |
症例は39歳男性。自然気胸術後である以外に特記すべき既往なし。約2週間持続する左下腹部痛を主訴に前医を受診、骨盤内腫瘤による左水腎症の診断にて当院紹介となった。左水腎症に対しては尿管ステント留置術を施行した。CTでは胃体部外側、脾門部、右横隔膜下、左腎下部、左骨盤部に不均一な造影効果を示す多発軟部腫瘤を認めたほか腹膜にも多数の結節形成があり、何らかの軟部悪性腫瘍に伴う播種および転移と考えた。MRIで同病変はT1強調画像で筋と同程度の均一な信号強度を、T2強調画像で均一な高信号を示し、造影効果は不均一であった。FDG-PETではCTで指摘された病変部位に一致して集積を認めた。各種腫瘍マーカー(CEA, CA19-9, AFP, PIVKA-II, CA125, CA15-3, SCC, NSE, hCGβ, sIL-2R)は陰性であり、診断確定目的に腹腔鏡下腫瘍生検術を施行、胃体部外側の5cm程度の黄色葡萄房状の腫瘤を摘出した。病理組織学的には比較的大型でクロマチン粗造な核と好酸性の細胞質を有する異型細胞のびまん性シート状増殖を認めた。免疫染色ではvimentin,desmin,NSE,WT-1が陽性、α-SMA,pan-cytokeratin,EMAが一部陽性、LCA,S-100,myoglobinが陰性であり、Desmoplastic small round cell tumor(以後DSRCT)の診断となった。DSRCTは若年男性、腹腔内に好発する線維形成性悪性腫瘍であり、頻度は稀だが極めて予後不良である。悪性度の高い腹腔内多発腫瘤の鑑別疾患の一つであるDSRCTの一例を経験したため若干の文献的考察を加えて報告する。 |