セッション情報 | Freshman Session(卒後2年迄) |
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タイトル | F3-1:慢性型特発性血小板減少性紫斑病に合併した多発肝転移を伴う直腸癌に対してトロンボポエチン受容体作動薬を投与しながら化学療法を施行した1例 |
演者 | 山田 萌(大阪大学 消化器内科) |
共同演者 | 藤永 哲治(大阪大学 消化器内科), 新崎 信一郎(大阪大学 消化器内科), 山田 拓哉(大阪大学 消化器内科), 井上 隆弘(大阪大学 消化器内科), 江崎 久男(大阪大学 消化器内科), 宮崎 昌典(大阪大学 消化器内科), 薬師神 崇行(大阪大学 消化器内科), 西田 勉(大阪大学 消化器内科), 平松 直樹(大阪大学 消化器内科), 辻井 正彦(大阪大学 消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学 消化器内科) |
抄録 | 症例は60歳代の女性。25歳時に特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP)と診断され、当院血液腫瘍内科でステロイド内服治療によりPLT1.0x104/μL前後で推移、出血傾向を認めなかったため経過観察されていた。2012年5月頃より血便を自覚し、同年6月の血液検査で肝機能異常を認めた。腹部造影CTにて肝両葉に多発リング状濃染、直腸の全周性肥厚、大網・腸間膜の結節性病変を指摘されたため、同月当科に紹介され、7月に入院となった。入院時Hb11.4g/dL、PLT0.9x104/μLと軽度の貧血と著明な血小板低下を認めたが、出血時間は正常であった。下部消化管内視鏡検査では肛門縁9cmの直腸Raに半周性の3型病変を認め、同部位からの病理組織検査は高~中分化腺癌であった。以上より肝転移および腹膜播種を伴うStageIV直腸癌と診断した。肝転移は両葉に認められ、また原発巣による症状を認めないことから、血小板低下が改善されれば切除以外の対応として全身化学療法を施行する方針となった。ITPの治療として従来行われてきたγグロブリン大量療法や血小板輸血では持続的な効果が見込めないため、化学療法中の長期的な血小板増加を期待し、トロンボポエチン受容体作動薬であるRomiplostimの投与を開始した。投与開始1ヵ月後にPLT4.8×104/μLまで上昇したため、同年8月からCapeOX 療法(capecitabine+L-OHP)を開始した。化学療法施行中もRomiplostim継続投与にてPLT5.0x104/μL程度に保たれ、重篤な骨髄抑制も認めず、血便や皮下出血などの出血傾向も認めなかった。その他化学療法による重篤な有害事象は認めず、2クール目からは外来に移行し、化学療法を継続しえている。ITPを合併した悪性腫瘍に対する化学療法の戦略については一定の見解はない。今回Romiplostimにて血小板低下を改善しながら化学療法を施行しえた貴重な症例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 | ITP, 直腸癌 |