セッション情報 一般演題

タイトル 63:

内科診療所におけるB型肝炎122例の検討:核酸アナログを中心とした治療の実態

演者 菅野 雅彦(すがの内科クリニック)
共同演者 松野 たか子(すがの内科クリニック), 永田 聖華(すがの内科クリニック), 前川 直子(すがの内科クリニック)
抄録 【目的】B型肝炎患者は診療所にも意外に多く来診しているが、肝機能障害を主訴としていない場合は病態精査や治療に結びつかないことも多い。また経過観察のみの症例では脱落例も多いが、当院での現状について報告する。【対象と方法】通院中のB型肝炎患者は、2009年秋(来診患者40名/日)の調査では74例、本年9月(50名/日)の再調査では89例であった。3年間に脱落した33例(44.6%)の理由、及び現在の治療を検討する。USにて評価した慢性肝障害の程度(CH)は点数化した(0:正常から4:肝硬変)。【結果】脱落の理由では、転居(勤)が9例(平均41.0歳)と多く、妊娠や他疾患等による転医5例(35.4歳)、逝去6例(60.0歳HCC4例)。性感染症にて受診の3例(36.0歳)はすべて自己中断、原因不明の10例はすべてseroconversion後の低ウイルス例であった。治療インターフェロン治療は非Peg製剤を11例に投与し、4例がseroconversion。現在はPegIFNα2aを5例に投与中。核酸アナログではラミブジン(LAM)は12例に用いたが、6例はエンテカヴィル(ETV)に切り替え、5例は中止、7年以上耐性の生じていない1例のみ継続投与中。ETVは25例に投与(22例継続, 2例逝去:HCC, 1例中止)。治療経過をおえた20例 (55.2歳M8:F12)では、平均32.8ヶ月投与でHBV-DNAは6.0±2.4 log copy /mlから1.2±1.1、ALTは65.5 IU/mlから20.4、ASTは52.8→22.4、γ-GTP46.4→40.0と低下。AFPもHCCの4例を除くと10.0 mAU/mlから4.0に低下、血小板は14.6万から16.6万に増加した。CHの点数も2.4→2.2に低下、症例別でもHCC合併例以外は増加せず。HBeAg陽性7例中4例は陰性化、HBeAg陽性例ではHBV-DNA量は8.3から1.8、陰性13例では4.8から0.8で低下率は前者に大きい。副作用は浮腫, 皮疹, 悪心,胃部痛が各1例あったがいずれも継続投与可能であった。【結語】B型肝炎は他疾患にて検査時に偶然発見される症例も多い。診療所では細かな診察も可能なため、HCC予防のためにも肝機能に注目し早期に治療に継ぐことが大切と考える。
索引用語 B型慢性肝炎, エンテカヴィル