セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル Y4-7:

診断に苦慮した腹腔動脈起始部圧迫症候群の一例

演者 藤永 幸久(奈良県立奈良病院 消化器内科)
共同演者 中谷 敏也(奈良県立奈良病院 消化器内科), 才川 宗一郎(奈良県立奈良病院 消化器内科), 澤田 保彦(奈良県立奈良病院 消化器内科), 神戸 大介(奈良県立奈良病院 消化器内科), 永松 晋作(奈良県立奈良病院 消化器内科), 関 健一郎(奈良県立奈良病院 消化器内科), 下里 直隆(奈良県立奈良病院 消化器内科), 松尾 英城(奈良県立奈良病院 消化器内科), 菊池 英亮(奈良県立奈良病院 消化器内科)
抄録 【症例】53歳男性。28歳時に胆嚢摘出術、39歳時に総胆管結石に対してESTを施行している。平成23年6月18日昼頃に、一過性の腹痛を自覚した。スポーツジムより帰宅し、夕食後から全身倦怠感、39℃台発熱、嘔吐を認め救急外来を受診した。急性胃腸炎と診断され、点滴と抗菌薬を投与後帰宅となった。同年6月26日、同様にスポーツジムから帰宅し夕食後の21時過ぎに突然の激しい腹痛を自覚し、救急受診した。来院時は疼痛が強く冷汗著明であった。腹部は平坦、軟で心窩部に圧痛を認めた。腸蠕動音は、異常を認めなかった。WBC 14800 /μl、AST 47 IU/lと上昇を認める以外は異常なかった。腹部造影CT(軸位断)では、総胆管は径8mmと拡張していたが閉塞機転はなく、胃はfull stomachであるが閉塞を認めず、腹痛の原因は不明であった。点滴施行し経過観察したところ、腹痛は消失し帰宅となった。同年8月29日朝食後より再び鋭い心窩部痛が出現し、嘔吐も伴うようになったため救急受診した。再度、腹部造影CT(軸位断)を施行したが、前回と同様の所見であった。経過観察すると症状が消失したため、帰宅となった。総胆管結石の既往があるためMRCPを施行したが、総胆管は径9mmと拡張するも陰影欠損を認めず、膵にも異常なく腹痛の原因を特定できなかった。これまでの急激な腹痛の発症と自然消失を繰り返すという臨床経過より、血流障害を疑い再度造影CT(軸位断・矢状断)を施行したところ、軸位断では明確に指摘できなかったが、矢状断では腹腔動脈起始部の圧痕様の狭窄を認め、腹腔動脈起始部圧迫症候群と診断し得た。生活指導により過度の食事・運動を控えることにより症状の出現は認めていない。当初、受診はいずれも夜間当直帯で、CT画像も軸位断の画像のみでthin sliceでなかったことより、腹腔動脈と上腸間膜動脈が誤認されており、診断に難渋した。【結語】食後の急性腹症の原因として腹腔動脈起始部圧迫症候群も念頭におくべきであり、血流障害を疑い造影CTを行う際には軸位断・矢状断も含めた評価を行うか、thin sliceでの評価を行うことが重要と考えられた。
索引用語 腹腔動脈狭窄, 急性腹症