セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F4-10:

高度の黄疸を呈し、EBウイルス初感染の関与が疑われたNASHの一例

演者 友松 典子(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科)
共同演者 大内 佐智子(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 塩澤 寛子(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 白川 裕(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 八幡 晋輔(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), さか本 喜雄(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 堀田 和亜(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 廣畑 成也(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 尹 聖哲(兵庫県立加古川医療センター 消化器内科), 藤本 昌代(兵庫県立加古川医療センター 病理科), 田代 敬(兵庫県立加古川医療センター 病理科)
抄録 症例は44歳女性。感冒様症状が2週間続いたのちに家人に黄疸を指摘され、当院受診。T-Bil 12.2mg/dl,D-Bil 9.8 mg/dl ,AST 156IU/L,ALT 175IU/L, ALP 4504IU/L, LDH 534IU/Lと高度の黄疸と肝胆道系酵素の上昇を認めた。またHbA1c (NGSP) 13.3%,Glu 280mg/Lと糖尿病が認められた。腹部CT検査にて肝臓に高度の脂肪沈着と脾腫が認められ、胆道系の閉塞機転は認められなかったが、胆嚢壁は浮腫状に肥厚しており肝炎の2次性変化と考えられた。肝細胞性黄疸と考え肝障害の原因を検索した。HBs抗原陽性であったがHBV-DNAは2.5LC/mlと低ウイルス量であり、B型肝炎の活動性は少ないと考えられた。血清学的にEBNA陰性、EADR陽性、EBVCA IgM陽性であったことからEBウイルスの初感染と考えられた。薬剤の関与はなかった。IgG2116mg/dlと高値、抗核抗体40倍、HLA-DR4陽性であったが、自己免疫性肝炎の国際診断基準では従来の改訂版スコアリングシステム(1999年)でも簡易版スコアリングシステム(2008年)でも該当しなかった。肝生検では慢性肝炎の変化とともに約50%の肝細胞に大滴性脂肪化を認め、小葉中心のpericellular fibrosisが目立ち、NASHの存在が示唆された。インスリン治療およびウルソデオキシコール酸のみで肝障害は速やかに改善した。EBウイルスはその後長期にわたり末梢血でDNAが検出され、広義の慢性EBウイルス感染症となったが、肝炎は鎮静化し良好な経過を辿っている。NASHを背景に持ち、複合的な要因で高度な黄疸を伴った肝障害をきたした一例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 黄疸, NASH