セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル Y3-8:

Thiopurine製剤による寛解維持療法中に非結核性抗酸菌症を来たしたCrohn病の1例

演者 平野 智紀(京都大学 医学部 消化器内科)
共同演者 松浦 稔(京都大学 医学部 消化器内科), 吉野 琢哉(京都大学 医学部 消化器内科), 仲瀬 裕志(京都大学 医学部 消化器内科), 千葉 勉(京都大学 医学部 消化器内科)
抄録 【症例】39歳女性【現病歴】1987年(14歳時)、腸閉塞にて緊急手術(小腸部分切除,残存小腸は約2m)を施行され、術後病理組織検査にてCrohn病と診断された。以降、Mesalazine内服および栄養療法で加療されていたが、小腸大量切除に伴う低栄養状態と炎症コントロールに難渋し、しばしば腸閉塞症状も繰り返していた。2008年10月頃より腹痛、血便、排便回数の増加が出現し、前医で施行された大腸内視鏡検査にて回腸末端の著明な狭窄および縦走潰瘍を認め、2009年7月当院紹介受診となった。【臨床経過】当院初診時、るい痩著明(BMI 14.3)で右下腹部に腫瘤触知と圧痛を認め、血液検査では低栄養(TP 4.7,Alb 2.4,T-chol 65)と炎症反応の亢進(CRP 0.3)を認めた。初診時CDAI 332点(moderate active)と疾患活動性高く、加えて有症状の狭窄病変が存在していたことから、Thiopurine製剤による寛解導入療法を開始した。以降、自覚症状および炎症所見とも改善し、Thiopurine製剤とMesalazine併用により長期にわたる寛解維持を継続していた。2012年4月初旬より持続する咳嗽が出現し、同年5月当院呼吸器内科を受診。胸部CTにて両肺に多発する小葉中心性~汎小葉性病変と気管支拡張像、さらにS2およびS10に空洞性病変を認め、抗酸菌感染症を疑われた。喀痰培養およびPCR検査にてMycobacterium avium陽性、M. tuberculosis complexおよびM. intracellulare陰性、またQuanti FERON陰性であり、肺非結核性抗酸菌症と診断。現在、Clarithromycin、Rifampicin、Ethambutol、Streptomycinによる4剤併用療法を継続中である。【考察】非結核性抗酸菌症は結核菌とらい菌以外の抗酸菌による感染症で、特に本邦において罹患率が大幅に増加している。しかし、一般に薬物療法が効きにくく、エビデンスに基づく治療レジメンも確立されていないため、時に治療に難渋する。近年、Crohn病や慢性関節リウマチ患者に対する抗TNFα製剤使用時の非結核性抗酸菌症の合併が注目されているが、Thiopurine製剤使用時に同症を合併した報告は稀であり、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 Crohn病, 非結核性抗酸菌症