セッション情報 一般演題

タイトル 27:

ヘリコバクター・ピロリ菌除菌治療後に幽門狭窄を来した悪性リンパ腫の1例

演者 中沢 和之(西村会 向陽病院 消化器内科)
共同演者 新垣 直樹(西村会 向陽病院 消化器内科), 前北 隆雄(西村会 向陽病院 消化器内科), 森 良幸(西村会 向陽病院 消化器内科), 清水 遼(西村会 向陽病院 消化器内科), 太田 有紀(西村会 向陽病院 消化器内科), 榎本 祥太郎(西村会 向陽病院 消化器内科), 西村 道彦(西村会 向陽病院 消化器内科), 一瀬 雅夫(和歌山県立医科大学 第2内科)
抄録 症例は81歳、女性。主訴は、嘔吐、食欲不振。2007年1月、近医を受診、上部消化管内視鏡検査で、異常所見を認めたため、精査加療目的で当院紹介され入院した。血液検査で、Hb 7.4g/mLと貧血を認め、sIL-2R 941U/mLと上昇を認めた。抗H.pylori(HP)IgG抗体 陽性。上部消化管内視鏡検査では、幽門部全周から胃角部にかけて広範な潰瘍性病変を認めた。生検病理検査では、胃悪性リンパ腫(免疫染色CD79a陽性、CD20陽性)であった。PET-CT検査では、胃幽門部と周囲のリンパ節(1個)にFDGの集積を認めた。認知症が高度であったため、化学療法や手術での加療を家族が希望されなかったため、十分なインフォームドコンセントの下、HP除菌療法を施行した。病変部は著明に改善したが、潰瘍瘢痕による幽門狭窄を認めたので、食道用ステント(UltraflexTM食道ステントnon-coverd 15cm 径18mm)を狭窄部に挿入した。以後、当院の老人介護施設で経過観察した。3年2ヶ月後、他疾患で死亡されたが、ステントはingrowthなどなく開存していた。MALTリンパ腫はHP除菌療法が第1選択とされてるが、除菌療法で改善の得られないものも存在する。本症例は生検でMALTリンパ腫に特徴的な所見が得られず悪性リンパ腫と診断したが、除菌が著効したことからMALTリンパ腫であったのではないかと考えている。基礎疾患があって手術や化学療法が困難な場合や、本症例のように認知症が高度で家族が積極的加療を希望されない場合は、HP除菌が治療の選択肢として考えられた。
索引用語 胃, 悪性リンパ腫