セッション情報 ワークショップ1「膵疾患診療の最近の進歩」

タイトル W1-13追加発言:

当院における早期慢性膵炎の臨床経過と治療効果の検討

演者 稲富 理(滋賀医科大学 消化器内科)
共同演者 安藤 朗(滋賀医科大学大学院 感染応答・免疫調節部門), 藤山 佳秀(滋賀医科大学 消化器内科)
抄録 【目的】慢性膵炎臨床診断基準2009にて早期慢性膵炎の概念が取り入れられて以来、より早期の膵障害の拾い上げが可能となったが、その臨床的意義については依然症例の積み重ねが必要である。今回我々は当院で診断された早期慢性膵炎症例について臨床経過と治療効果について検討した。【方法】対象は当院にて診断治療を行った疑い7例を含む早期慢性膵炎22症例(平均年齢64.4歳、男女比12:10)。カモスタットメシル酸塩および消化酵素配合剤を、効果を認めない症例に対しパンクレリパーゼを追加投与し、症状、膵酵素値、EUS所見の経時的変化を検討した。【成績】早期慢性膵炎診断基準のうちEUS所見の合致項目数は診断群2.5±0.5、疑い群2.2±0.8項目であった。臨床症状の診断項目別合致率は(1)反復する上腹部痛は18/22(81.8%)(2)血中膵酵素異常は16/22(72.7%)(3)外分泌障害は3/22(13.6%)(4)1日80g以上の飲酒歴は3/22(13.6%)であった。また、上昇した膵酵素の内訳では、トリプシン高値の症例が最も多かった。治療内容はメシル酸カモスタット15/22(78.9%)、膵性消化酵素剤19/22(86.3%)、パンクレリパーゼ5/22(22.7%)であり、診断後治療期間は平均16.7ヶ月であった。上腹部痛の改善は早期慢性膵炎診断群で77.8%に認め、Face rating scaleでも有意に低下を認めた(P=0.0009)。また膵酵素値はリパーゼ・エラスターゼ1で治療前後において有意に改善を認めた(P=0.01, 0.02)。EUS所見の改善は両群とも1例も認めなかった。【考察および結論】早期慢性膵炎では多くの症例で投薬による臨床所見の改善を認めたため、原因のはっきりしない上腹部痛では、複数の膵酵素測定・EUSを施行し診断を積極的に行っていく必要がある。膵酵素剤の投与は、顕在化していない膵外分泌能低下症状の改善に関与している可能性が示唆され、少なくとも有症状を呈する症例には積極的に治療介入を行う臨床的意義が大きいと思われた。
索引用語 早期慢性膵炎, EUS