セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル Y2-2:

救命しえた高齢者の非閉塞性腸間膜虚血症の一例

演者 林 克平(大阪市立大学 大学院 消化器内科学)
共同演者 宮嵜 孝子(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 山上 博一(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 森本 謙一(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 福永 周生(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 野口 篤志(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 鎌田 紀子(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 永見 康明(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 杉森 聖司(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 十河 光栄(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 谷川 徹也(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 斯波 将次(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 渡辺 憲治(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 渡辺 俊雄(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 富永 和作(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 藤原 靖弘(大阪市立大学 大学院 消化器内科学), 渋谷 雅常(大阪市立大学 大学院 腫瘍外科), 野田 英児(大阪市立大学 大学院 腫瘍外科), 平川 弘聖(大阪市立大学 大学院 腫瘍外科), 荒川 哲男(大阪市立大学 大学院 消化器内科学)
抄録 症例は80歳女性。鉄欠乏性貧血と便潜血検査陽性のため前医で上部および下部消化管内視鏡検査をうけたが異常を指摘されなかった。潜在性消化管出血の精査のためカプセル内視鏡検査を施行したところ、小腸にびらんや潰瘍を認め脳梗塞疑いに対して内服していたアスピリンに起因する小腸傷害と考え、アスピリンの投与を中止し経過観察していた。一か月後、腹痛のため当科を受診しイレウスの診断で同日当科入院となった。入院時、腹部は全体的に軽度の圧痛を認めたが反跳痛や筋性防御を認めなかった。しかし翌日の腹部造影CT検査では小腸全体に内容物が貯留し、肝内に樹枝状の門脈ガス血症と腸管全体に壁内ガスを認めた。腸管に閉塞機転はなく、主要血管に明らかな閉塞や血栓形成などを認めなかったが、空腸中部から回腸末端まで広範囲にわたって造影不良領域を認めた。非閉塞性腸管虚血症による腸管壊死を疑い同日緊急開腹術を施行した。術中所見では絞扼所見を認めなかったが、トライツ靭帯から90cm肛門側の空腸から回腸末端まで全層にわたる虚血性壊死を認め、同部位の壊死腸管および盲腸を切除した。摘出標本病理組織所見では炎症性細胞の浸潤や潰瘍、立ち枯れ様の上皮脱落などの虚血性変化を認めたものの、静脈内に血栓を認めなかった。術後は短腸症候群のため中心静脈栄養管理となったものの経過は良好であった。非閉塞性腸管虚血症は早期診断が難しく、致死率50%以上と高い疾患であるが、今回小腸広範囲切除により救命に至った一例を経験したので文献的考察を加えて報告する。
索引用語 非閉塞性腸管虚血症, 高齢