セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル Y5-9:

内科的加療が奏功した広範な門脈血栓症2例の検討

演者 吉川 貴章(天理よろづ相談所病院 消化器内科)
共同演者 岡部 誠(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 美馬 淳志(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 森澤 利之(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 塩 せいじ(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 宮島 真治(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 木田 肇(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 岡野 明浩(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 沖永 聡(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 大花 正也(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 久須美 房子(天理よろづ相談所病院 消化器内科), 鍋島 紀滋(天理よろづ相談所病院 消化器内科)
抄録 【症例1】52歳男性。既往歴に特記事項なし。2012年3月3日よりの心窩部痛があり症状持続するため、3月6日当院救急外来受診した。同日腹部造影CTにて門脈本幹から上腸間膜静脈・脾静脈末梢に至る広範な門脈血栓症と診断され、緊急入院した。腸管虚血像はないため、末梢静脈からのヘパリン持続点滴による保存的加療を選択し、腹痛は軽快した。食事再開後、ワーファリン開始後も著変なく3月24日に軽快退院した。凝固因子異常は不明であった。2か月後の腹部造影CTでは縮小傾向を認めている。
【症例2】57歳男性。既往歴に心筋梗塞があり、バイアスピリン内服していた。2012年6月8日よりの心窩部痛があり、6月11日に前医入院した。上部消化管内視鏡では異常は指摘されなかった。前医を6月21日自己退院し、当院紹介受診した。同日腹部造影CTにて門脈本幹から上腸間膜静脈、脾静脈末梢にまで至る門脈血栓症と診断され、緊急入院した。腸管虚血像はなく、末梢静脈からのヘパリン持続点滴にて腹痛は自然消失した。凝固因子異常は不明で、下部消化管内視鏡では明らかな異常は指摘されなかった。食事再開、ワーファリン開始し7月5日軽快退院した。1か月後の腹部造影CTでは血栓縮小傾向を認めている。
【考察】門脈血栓症は肝硬変をはじめとした門脈圧亢進症、悪性腫瘍、腹腔内炎症、腹部手術、凝固因子異常といった原因で引き起こされる血栓症であるが、25%程度は特発性である。治療法として確立したものはなく、ウロキナーゼ・tPAの選択的投与、ヘパリン点滴・ワーファリン内服による抗凝固療法、外科的血栓除去術などが考慮される。今回の2症例はヘパリン点滴・ワーファリン内服のみで軽快した。当院では他にこの5年間で10例の門脈血栓症を経験しており過去の治療歴、並びに他の文献的考察と併せて報告する。
索引用語 門脈, 血栓症