セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F2-6:

小腸内視鏡が診断に有用であった血管炎症候群の1例

演者 金子 望(パナソニック健康保険組合 松下記念病院 )
共同演者 磯崎 豊(パナソニック健康保険組合 松下記念病院 消化器科), 安田 知代(パナソニック健康保険組合 松下記念病院 消化器科), 山西 正芳(パナソニック健康保険組合 松下記念病院 消化器科), 酉家 章弘(パナソニック健康保険組合 松下記念病院 消化器科), 沖田 美香(パナソニック健康保険組合 松下記念病院 消化器科), 長尾 泰孝(パナソニック健康保険組合 松下記念病院 消化器科), 小山田 裕一(パナソニック健康保険組合 松下記念病院 消化器科)
抄録 【症例】37歳,男性.【主訴】上腹部痛.【既往歴】2012年5月てんぷら油で熱傷. 腹部から下肢にかけて自家植皮術後.【経過】2012年9月2日より左上腹部に間欠的で締め付けられるような痛みを自覚し,近医を受診した.血液検査でCRPの軽度上昇を,腹部CTで回腸末端に小腸壁の肥厚所見を認めた.感染性腸炎疑いで抗生剤を開始されたが,症状の改善が得られず,9月18日に精査目的のために当院へ転院となった. 小腸壁肥厚の精査のために施行したダブルバルーン小腸内視鏡検査で,回盲部から60cm口側の回腸に多発性の小潰瘍と虚血性の変化と思われる暗赤色の浮腫状粘膜を認めた. さらに上部消化管内視鏡検査で幽門前庭部から十二指腸下行脚にかけて,びらんを伴う浮腫状粘膜を認めた.十二指腸と回腸の生検組織で小型から毛細血管の周囲に炎症細胞の著明な浸潤を認め,壊死性血管炎と診断した.内視鏡検査後より下肢に発疹が出現し,皮膚生検を施行したところ,壊死性血管炎が疑われる所見を認めた. 以上より,全身性の血管炎症候群に伴う小腸潰瘍と考え,9月28日より副腎皮質ステロイドおよび免疫調整剤(アザチオプリン)の投与を開始した.投与開始直後から,腹部症状は速やかに軽快し,CRPも陰性化した.10月中旬に施行した内視鏡検査では回腸の病変は瘢痕化しており,十二指腸のびらんや浮腫は消失していた. 生検組織でも壊死性血管炎の所見は認められなかった.【考察】本症例では, 消化管と皮膚以外に臓器傷害を認めず,皮疹も明らかな紫斑では無かったため, 病型の確定診断には至ることが出来なかった. しかし,ダブルバルーン小腸内視鏡による病変部粘膜からの生検で壊死性血管炎の所見が認められたことで, 副腎皮質ステロイドと免疫調整剤による治療を開始し,病状を改善することが出来た. 血管炎症候群に伴う消化管病変はときに出血・穿孔などの重篤な合併症を発症する場合もあるため,原因不明の腹痛を認めたときには本疾患の可能性も十分考慮し,診療を進めるべきと考えられた.
索引用語 血管炎症候群, 小腸内視鏡