抄録 |
大腸癌肝転移においては、薬物療法の進歩により、初診時に切除不能と診断されても、薬物療法を行うことで腫瘍が縮小し切除可能となり、手術に移行 (Conversion) できる症例が増加してきた。Conversionできた症例の治療成績は、初期治療として治癒切除可能と判断され外科切除が選択された症例と比較し遜色ない治療成績で報告されていることから、大腸癌肝転移以外の疾患でも同様の戦略が期待されている。 画像上脈管侵襲を伴う切除不能肝細胞癌症例の予後は不良で、SHARP Trialでの生存期間中央値は、placebo 4.9M, sorafenib 8.1Mと報告され (HR 0.68, 95% CI 0.49-0.93)、sorafenibが標準療法となっている。一方、わが国では、奏効が得られた場合に比較的良好な予後が期待できる肝動脈注入化学療法(肝動注)が一般的に行なわれてきた。二つの肝動注のレジメ (FP vs. IFN/5FU)を比較するために、我々は、切除不能Vp3-4, Vv3肝細胞癌症例を対象とした肝動注の無作為化比較試験を行なった。患者背景は、PS0/1; 23/6、Child-Pugh A/B; 17/12、Vp3/Vp4/Vv3/Vp3+Vv3; 11/13/3/2、stage IVA/B; 18/11で、重篤な有害事象を認めなかった。全体の生存期間中央値は10.2Mで、FP群(15例)およびIFN/5FU群(14例)のMSTはそれぞれ13.2M, 7.8Mで有意差は認めなかった(p=0.37)。29例中5例(17.2%)で肝動注が奏効し肉眼的治癒切除が可能となり (conversion)、長期生存を得た (27M肺再発死, 65M肺肝脳再発死, 67M無再発生存, 70M無再発生存, 102M無再発生存)。さらに、sorafenib登場後の手術適応外Vv3症例2例では、肝動注プラス肉眼的治癒切除プラスsorafenibによる術後治療により術後37Mおよび18M無病生存中である。【結論】切除不能例でも肝動注により切除可能となる症例があり、その予後は良好で、sorafenibでは得難い長期生存が達成できる。現在SILIUS試験により検証中である肝動注プラスsorafenibの併用療法により奏効率が向上すれば、さらにconversionできる症例の増加が期待される。また、Sorafenibによる術後治療により他臓器転移が予防できれば、予後の改善も期待できる。 |