セッション情報 ワークショップ2「食道癌の集約的治療の新たな展開」

タイトル W2-4:

Stage IVb食道癌に対する化学放射線治療の意義

演者 藤井 茂彦(京都桂病院 消化器センター 消化器内科)
共同演者 日下 利広(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 平田 大善(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 大岩 容子(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 冨田 友実(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 糸川 芳男(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 田中 秀行(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 後藤 規弘(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 越川 頼光(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 山口 大介(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 田中 泰敬(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 臼井 智彦(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 中井 喜貴(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 畦地 英全(京都桂病院 消化器センター 消化器内科), 國立 裕之(京都桂病院 消化器センター 消化器内科)
抄録 【背景・目的】遠隔転移を伴うstage IVb食道癌に対しては全身化学療法(CT)が一般的であるが,原発巣による狭窄や疼痛に対する緩和治療として局所制御を目的とした化学放射線療法(CRT)も重要である.しかし,有害事象の頻度増加や薬剤のdose intensityの低下から治療効果が損なわれる可能性もあり,放射線療法の併用は慎重に決定すべきである.今回,当院におけるstage IVb食道癌に対するCTとCRTの治療成績を解析し放射線治療併用の意義を検討した.
【対象・方法】2006年から2011年までに当院で加療したstage IVb食道癌のうち,CTを行った12症例とCRTを行った8例を対象とし,治療成績と臨床経過,有害事象を検討した.
【結果】CT群:CRT群の患者背景として性別(男/女)は10/2:8/0,平均年齢は66:69歳,PS(0/1/2)は0/7/5:1/6/1,腫瘍部位(Ut/Mt/Lt)は1/7/4:1/4/3,遠隔転移部位(肺/肝/骨/脳/LN/他)は7/4/6/2/1/1:1/4/3/1/1/0で2カ所以上の臓器転移を有した症例は6:3例であった.CRTの選択理由は狭窄解除目的が5例,原発巣が予後規定因子と判断したもの2例,遠隔転移がリンパ節転移のみが1例であった.生存期間中央値はCT群で9.5ヶ月(4-26ヶ月),CRT群で13ヶ月(5-24ヶ月).1年生存率はCT群で25%,CRT群で50%であった.奏効率(CR+PR)はCT群で33%,CRT群で75%であった.原発巣に限定するとCT群では8例(67%)で腫瘍増大による狭窄をみとめ,7例でステント,1例でPEGを行った.一方CRT群では5例(63%)で原発巣が制御可能で,生存期間中の経口摂取が可能であり,残りの3例は狭窄のためHPN(2例),ステント(1例)を行った.Grade 3以上の有害事象はCT群では8例にみとめられ,CT施行回数は平均4.3回(1-14回)であった.CRT群では5例で認められCRT完遂率は75%で,4例でCRT後化学療法の継続が可能であった.
【結論】Stage IVb食道癌に対してCRTにより局所制御率とQOLの向上が得られる可能性が示唆された.CRT後にはステントによる緩和治療が困難となる問題点があるが,原発巣の制御を目的とした緩和治療としてのCRTの効果が期待できると考えられ今後さらに検討する必要があると思われた.
索引用語 stage VIb食道癌, 化学放射線治療