セッション情報 ワークショップ1「膵疾患診療の最近の進歩」

タイトル W1-10:

重症急性膵炎(SAP)に対するThrombomodulin α(rTM)投与のストラテジー

演者 江口 考明(大阪府済生会中津病院 消化器内科)
共同演者 古賀 英彬(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 岩坪 太郎(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 黒澤 学(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 小池 英明(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 横田 甚(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 長谷 善明(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 安冨 栄一郎(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 上田 綾(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 川口 真平(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 生方 聡史(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 仙田 花実(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 大橋 理奈(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 田中 敏雄(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 山下 博司(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 福知 工(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 伊藤 大(大阪府済生会中津病院 消化器内科), 蘆田 潔(大阪府済生会中津病院 消化器内科)
抄録 【目的】SAPに対する治療は様々でコンセンサスは乏しい。そこで当院ではrTM発売後,SAP患者にはCT/採血による重症度判定の後,一般的治療に加えて急性期DICスコアを満たす患者には全例rTMを投与し治療を行っている。また造影CTで膵臓虚血部位を確認した場合は動注療法を併用している。SAPにDICを合併した患者へのrTMの有効性を検討しその治療ストラテジーを検討する。【対象と方法】rTM発売後の2009年以降に入院した重症急性膵炎23例をretrospectiveに検討した。SAPで非DIC患者が12例でA群としrTMも動注も行われなかった。DIC患者が11例で,そのうち膵虚血が無くrTMのみ投与した患者が8例でB群とした。残りの3例が膵虚血を認め動注を併用し,B群とあわせた11例をC群とし比較した(wilcoxon test)。【結果】予後因子とCTgrade両方で重症を満たした患者数は(A群:B群:C群/2:4:6)。転帰はC群で1例死亡,感染性膵壊死(A群:B群:C群/3:4:6)であった。それぞれの群で原因,発症時T-AMY,初期輸液量,蛋白分解酵素阻害剤投与量/日数,抗菌剤使用量は差を認めなかった。しかし年齢で(A vs B/57.5:75.1 P=0.018)( A vs C/57.5:73.4 P=0.014),発症時APACH II score(A vs B/7.3:13.6 P=0.040)( A vs C/7.3:14.0 P=0.009),重症度score(A vs B/1.58:2.87 P=0.027)( A vs C/1.58:2.90 P=0.021)でB群/C群は有意にA群より重症であった。さらに発症時CRP値(A vs B/14.9:22.3 P=0.069)( A vs C/14.9:21.9 P=0.039)だが7日目CRP値/低下率,CRP陰性化日数全てにおいてB/C群はA群と同等の改善を示し,経口開始日数/入院日数も同等であった。【考察】SAPにDICを合併した患者は非DIC群と比べて有意に高齢かつ重症であるにもかかわらず,rTM投与のみで動注療法を行わなくてもCRPの早期改善効果,治癒退院に繋がる可能性を示唆した。またB群/C群は感染性膵壊死の合併率が高く,はっきりとした膵虚血例には動注も行うことで非DIC群とほぼ同等の治療効果が得られており,SAPのDIC症例にはrTM投与を行い,膵虚血があれば動注を行うストラテジーの有効性を示唆できたと考える。
索引用語 急性膵炎, DIC