抄録 |
近年超音波内視鏡(EUS)による造影ハーモニックイメージングと第2世代の超音波造影剤であるソナゾイドにより,病変の微細血流の描出が可能になり膵腫瘍診断における有用性が報告されている。今回我々は膵癌と炎症性腫瘤における造影ハーモニックEUS(以下CH-EUS)の所見から,その鑑別能について検討した。【方法】EUSスコープはOlympus社製GF UE260-AL5もしくはGF UCT-260を使用し超音波装置はAloka社製Prosoundα10を使用した。超音波モードはExtended Pure Harmonicを用い,メカニカルインデックス(MI)は0.35とした。ソナゾイドを被検者の体重に合わせ0.015ml/kg静注後,連続的に超音波像を観察した。対象は2008年6月から2012年6月までの間にCH-EUSを行った膵癌42例,腫瘤形成性膵炎3例,AIP5例である。最終診断はEUS-FNAもしくは手術による病理診断か,CTやMRI,EUS等の画像所見と6カ月以上の経過観察に基づき行われた。【結果】膵癌42例についてfundamental B-mode EUSでは37例が低エコー,辺縁不整,境界明瞭な腫瘤として描出されたが5例において境界が不明瞭であった。これら5例はCH-EUSでは腫瘍内部の染影効果が周囲膵実質よりも弱いhypoenhancementを呈することで,明瞭な描出が可能となった。また膵癌では浸潤性膵管癌のうち管状腺癌の40例は全例hypoenhancementを呈したが,腺扁平上皮癌の1例と退形成癌の1例はisoenhancementを呈し,組織型により染影パターンが異なる可能性が示唆された。AIP5例は全例isoenhancementを呈し,TFPは3例中2例がhypoenhancement,1例がisoenhancementであった。CH-EUSにおいてhypoenhancementを膵癌の指標とした時の感度は95.2%,特異度77.8%,正診率94.0%であった。MDCTとの比較ではhypovascular腫瘤を膵癌の指標とした時のMDCTの感度は85.7%,特異度53.8%,正診率78.2%であった。【結論】CH-EUSは膵癌と炎症性膵腫瘤との鑑別に有用である。 |