セッション情報 ワークショップ1「膵疾患診療の最近の進歩」

タイトル W1-9:

重症急性膵炎(SAP)に対する膵Perfusion CT像と血漿ADAMTS13活性の動態

演者 森岡 千惠(奈良県立医科大学)
共同演者 植村 正人(奈良県立医科大学), 福井 博(奈良県立医科大学)
抄録 【目的】SAPは高率に多臓器不全(MOF)を来たす予後不良な疾患である。ADAMTS13活性が低下すると超高分子量VWFマルチマーが増加し、血小板血栓形成傾向となり諸臓器の微小循環障害が惹起される。我々は血漿ADAMTS13活性の低下がSAP の重症度の指標になることを指摘したが、今回、膵虚血を早期に評価し得るperfusion CT像とADAMTS13活性の動態を検討した。【方法】対象はSAP男性3例。各例の重症度スコアー、CT grade、APACHE IIスコアーは、症例1 (76才,死亡) 4,3,19, 症例2 (46才, 生存)0,2,6, 症例3 (25才, 生存) 1,2,1である。Perfusion CTはGE medical社 system Light Speed 16を用い、Decomvolusion法にて解析した。第1&14病日に造影CTとPerfusion CTを対比し、経過を追ってADAMTS13活性、VWF抗原を測定した。【結果】症例1の第1病日造影CTでは、頭部~尾部に造影不良域を認め、Perfusion CTにて同部位のblood Volume(BV)の著減を認めた。第14病日造影CTでは膵体尾部は壊死に陥っていた。ADAMTS13活性は第1病日22%(正常100%)、以後11%~19%と低値持続。VWF抗原は第1病日378%(正常100%)、第7病日に648%に上昇した。症例2&3:2例とも第1病日造影CT では造影不良域は認めず、Perfusion CTでも膵全体のBVは保持されていた。ADAMTS13活性は第1病日それぞれ43%, 40%と軽度低下したが、以後速やかに上昇。VWF抗原は2例共、軽度上昇した後低下した。【結論】SAP早期にPerfusion CTで著明な血流低下を示す部位は膵壊死に至る可能性がある。血漿ADAMTS13活性は広範囲膵壊死例で低下したことより、本酵素活性低下はSAP発症早期の膵灌流障害と関連する可能性がある。
索引用語 重症急性膵炎, ADAMTS13