セッション情報 Young Investigator Session(卒後3-5年目迄)

タイトル Y7-4:

8年間にわたって経過を観察し得た膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)の1例

演者 丸井 彩子(大阪赤十字病院 消化器科)
共同演者 松田 史博(大阪赤十字病院 消化器科), 岡部 純弘(大阪赤十字病院 消化器科), 竹田 治彦(大阪赤十字病院 消化器科), 金坂 卓(大阪赤十字病院 消化器科), 中島 潤(大阪赤十字病院 消化器科), 坂本 梓(大阪赤十字病院 消化器科), 幡丸 景一(大阪赤十字病院 消化器科), 邉見 慎一郎(大阪赤十字病院 消化器科), 齋藤 澄夫(大阪赤十字病院 消化器科), 西島 規浩(大阪赤十字病院 消化器科), 那須 章洋(大阪赤十字病院 消化器科), 西川 浩樹(大阪赤十字病院 消化器科), 米門 秀行(大阪赤十字病院 消化器科), 関川 昭(大阪赤十字病院 消化器科), 津村 剛彦(大阪赤十字病院 消化器科), 喜多 竜一(大阪赤十字病院 消化器科), 圓尾 隆典(大阪赤十字病院 消化器科), 木村 達(大阪赤十字病院 消化器科), 大崎 往夫(大阪赤十字病院 消化器科), 若狭 朋子(大阪赤十字病院 病理部)
抄録 症例は31歳女性, 主訴は腫瘤触知. 22歳時にアルコール性急性膵炎の既往があった. 23歳時にアルコール摂取後の腹痛のため当院を初診し, アルコール性急性膵炎と診断された. その際の腹部CTで膵体尾部に30 mm大の嚢胞性病変を指摘された. CT上は境界明瞭で内部にわずかに隔壁様構造がみられ, 造影MRIでは隔壁に造影効果を伴っていた. また, 超音波内視鏡検査(EUS)では, 多房性の嚢胞性病変として描出された. MCNを疑って精査を勧めたが, 来院が中断した. 24歳および25歳時にも急性膵炎の診断で数日間入院したが, 嚢胞径に著変を認めなかった. 再度精査を勧めたが, 退院後は外来受診していなかった. 27歳時にも上腹部痛のため入院したが, USでは膵体尾部の嚢胞性病変はcyst in cystを呈しており, 40 mm大に増大していた. やはりMCNが疑われる像であったが, 妊娠中であったために後日精査予定とされた. 退院後来院していなかったが, 31歳時に左上腹部に腫瘤を触れるとの主訴で受診した. CTおよびMRIで膵体尾部の嚢胞性病変は120 mmへと著明に増大しており, 厚い被膜と内部の隔壁様構造を認めた. 精査について同意が得られたため, EUSおよび内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)を施行した. EUSでは被膜を伴い, 内部に点状の高エコーが充満する嚢胞性腫瘍であり, 辺縁にcyst in cystの所見を認めた. ERPでは体尾部の膵管の圧排所見のみで, 膵管との交通を認めなかった. 以上よりMCNの診断で, 膵体尾部・脾臓合併切除術を施行した. 病理組織学的に高円柱状を呈する腫瘍細胞で被覆される嚢胞上皮下に卵巣様間質を認め, MCNと確定診断した. MCNはmalignant potentialを有する腫瘍のため, 診断時に手術適応とされ長期経過を観察する症例は稀である. 今回は, 増大していく経過を確認できた1例であり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 膵粘液性嚢胞腫瘍, 嚢胞性病変