セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F2-2:

術前診断に難渋したサイトメガロウイルス腸炎による回腸穿孔の1例

演者 宮脇 仁朗(済生会千里病院 卒後臨床研修センター)
共同演者 良原 丈夫(済生会千里病院 卒後臨床研修センター), 真田 徹(済生会千里病院 卒後臨床研修センター), 山口 大輔(済生会千里病院 卒後臨床研修センター), 大田 真紀代(済生会千里病院 卒後臨床研修センター), 水野 龍義(済生会千里病院 卒後臨床研修センター), 後藤 靖和(済生会千里病院 卒後臨床研修センター), 奥田 偉秀(済生会千里病院 卒後臨床研修センター), 堀本 雅祥(済生会千里病院 卒後臨床研修センター), 鈴木 都男(済生会千里病院 卒後臨床研修センター)
抄録 症例:71歳男性主訴:腹痛 発熱既往歴:関節リウマチ 十二指腸潰瘍 糖尿病病歴:関節リウマチに対し8年来治療中で、当院受診時メトトレキサート(MTX)16mg/week・ステロイド7.5mg/day・サラゾスルファピリジン1000mg/day・セレコキシブ400mg/dayを内服中であった。平成24年6月近医で抜歯後に感染をきたし経口抗生剤(セフジトレンピボキシルやクラリスロマイシン)投与されたが改善せず、腹痛も出現し食事摂取困難となり8月に当院紹介入院となった。CRP9.6mg/dlと高値だが上下部消化管内視鏡検査、胸腹部CT、炎症シンチで明らかな異常所見を認めず、抗核抗体(Nucleolar型)640倍より膠原病を疑いds-DNA抗体、RPN抗体、抗カルジオリピン抗体を測定するも陰性、サイトメガロウイルス(CMV)感染や真菌症を疑いC7-HRPやβ-Dグルカンを測定するも陰性であった。絶食とセフトリアキソン投与にて症状軽快し退院となるが、その6日後に激烈な下腹痛出現し来院、腹部CTで骨盤内にfree airを伴う回腸壁肥厚を認め、回腸穿孔疑いで緊急手術、回腸部分切除+回腸瘻造設術を行った。切除標本に核内封入体を認め免疫染色にてCMV腸炎と診断。C7-HRPは再検査で陽性と判明し、ガンシクロビル投与にて軽快し1ヶ月後退院となった。考察:健常成人の約80~90%はCMV抗体陽性で、ほとんどが不顕性感染と考えられる。CMVは易感染性患者でしばしば再活性化し、本症例もMTX・ステロイド内服による免疫不全状態下の再活性化と考えられる。今回、C7-HRP陰性よりCMV感染は当初否定的と判断していた。C7-HRPのCMV感染での感度・特異度は85%超で、発症に先行し陽性化するため有用とされているが、CMV腸炎での先行性は20-30%、発症時陽性率は約50%と感度が低く、注意が必要である。CMV腸炎は悪心、嘔吐、腹痛等の症状と消化管の潰瘍、びらん、発赤等の内視鏡所見にて疑い、生検で核内封入体保有細胞を検出することで診断する。臨床的に強くCMV腸炎を疑う場合、保険適応はないが定量PCR法の併用や上下部消化管内視鏡では確認できない小腸病変に対しカプセル内視鏡も考慮すべきと考える。
索引用語 腸管穿孔, サイトメガロウイルス