セッション情報 一般演題

タイトル 52:

診断に難渋した自己免疫性肝炎の1例

演者 太田 高志(NTT西日本大阪病院 内科)
共同演者 金子 晃(NTT西日本大阪病院 内科), 中島 佐知子(NTT西日本大阪病院 内科), 山本 守敏(NTT西日本大阪病院 内科), 巽 信之(NTT西日本大阪病院 内科), 久保 光彦(NTT西日本大阪病院 内科)
抄録 症例は50歳代男性.高血圧に対してamlodipine内服,ノコギリヤシエキスのサプリメントも内服していた.X年1月に全身倦怠感を自覚し近医を受診.肝障害を認め,加療目的で当科に緊急入院となった.入院時の血液検査でT-Bil. 14.9mg/dl, AST/ALT 1204/1569IU/Lと著明な肝障害が認められた.ノコギリヤシエキスのDLSTが陽性,HBs-Ag,HCV-Ab,ANA陰性であり薬剤性肝障害と診断.入院後,ノコギリヤシエキスを休薬しSNMC投与するが肝予備能低下を認めたためPSL 30mg/day投与開始.肝障害の改善を認め,2月に退院となった.退院後,AST/ALT正常化しPSLを中止.その後も再燃なく経過していたが,5月に肝機能悪化を認め緊急入院.入院時の血液検査でT-Bil. 15mg/dl, AST/ALT 1180/987IU/L, PT 48%と肝機能障害に加え肝予備能低下も認めた.4月に近医より降圧剤(olmesartan, bisoprolol)が処方されており薬剤性肝障害を疑ったが,いずれもDLSTは陰性であった.入院時のPT%が低値であり劇症化の危険性があると判断しPSL 30mg/day投与開始.その後,肝機能の改善を認めた.入院時にANA陰性であったがIgG 1991mg/dlと高値であり,PSLへの反応性が良好であるため,自己免疫性肝炎(AIH)を疑い肝生検施行.新犬山分類A2F2,interface damageを伴うが,AIHより薬剤性肝障害を疑うとの病理診断であった.国際診断基準ではAIH疑診であったが,薬剤性肝障害のスコアも5点と高得点であった.PSLを漸減し再燃ないことを確認して7月に退院.PSLを中止後も肝機能正常であった.X+1年5月に慢性心不全急性増悪のため当院に入院,慢性心不全に対して6月からβ blockerとしてbisoprololが処方された.7月に肝機能障害を認め,精査加療目的で入院となった.入院時はbisoprolol による薬剤性肝障害を疑い,内服中止しSNMC,UDCA投与開始.AST/ALTは順調に低下していたが,入院35日目にASTの再上昇認め,AIHの可能性を考え再度肝生検施行,typical AIHと診断された.肝生検翌日よりPSL 30mg/day投与開始,肝機能改善を認め,9月に退院となった.初回の肝生検はPSL投与開始後であり,AIHの診断が困難であったと考えられた.
索引用語 AIH, 国際診断基準