セッション情報 ワークショップ1「膵疾患診療の最近の進歩」

タイトル W1-2:

造影EUSによる膵腫瘤性病変の診断

演者 江崎 健(神戸大学 消化器内科)
共同演者 松木 信之(神戸大学 消化器内科), 塩見 英之(神戸大学 消化器内科), 有坂 好史(神戸大学 消化器内科)
抄録 【背景・目的】EUSは膵における小病変の描出能および病変の質的診断に優れた検査法として普及しており、さらに造影EUSはその診断能を向上させるものとして期待されている。しかし背景膵により評価が難しく、鑑別に苦慮する例も存在する。そこで我々は造影イメージを客観的評価する目的でTime intensity curve (TIC)を用いて定量的解析をおこない、その有用性について検討した。【対象・方法】2010年6月~2012年3月までにソナゾイドを用いた造影EUSを施行した膵癌(PC) 19例、腫瘤形成性膵炎(MFP) 15例、膵内分泌腫瘍(PNET) 9例を対象とした。また対象のうちPC 8例、MFP 7例、PNET 9例には病変部と病変外膵実質にROIを設定し、TICを作製することにより定量的解析を行った。病変部の膵実質に対する造影前でのintensity比、造影後peakでのintensity比、造影60秒後でのintensity比を算出し各疾患群で比較検討した。【結果】PC、MFP、PNETの全例でBモードでは低エコー腫瘤として描出された。造影モードでは造影開始60秒後の血流を評価し、PCは19例中17例がhypovascular、2例がisovascular、MFPは15例中11例がisovascular、4例がhypovascular、PNETは9例中4例がhypervascular、4例がisovascular、1例がhypovascularであった。TIC解析では、造影前intensity比の平均値はPC、MFP、PNETで各々0.24、0.50、0.28であり各群で有意差はなかった。造影後peakのintensity比は0.71、0.86、1.05であり、MFPに対してPC・PNETは有意差を認めなかったが、PCとPNETの間では有意差を認めた(p<0.01)。造影1分後のintensity比は0.37、0.90、1.05であり、PCはMFP・PNETと比較して有意に低値であった(p<0.01)。造影1分後のintensity比において、ROC曲線よりカットオフ値を0.80とした場合、TICによる定量的解析を施行した24症例での膵癌・非膵癌の感度は100%、特異度は87.5%で、正診率は91.7%であった。【考察】PCではhypovascular、MFPではisovascular、PNETではiso~hypervascularの造影パターンを呈する例が多く、さらにTICを用いた定量的解析を付加することで、より客観的に評価することが可能となると考えられた。
索引用語 造影EUS, TIC