セッション情報 Freshman Session(卒後2年迄)

タイトル F1-2:

スクリーニングの上部消化管内視鏡検査から食道結核の診断に至った1例

演者 栗原 重明(大阪市立総合医療センター 消化器内科)
共同演者 山崎 智朗(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 若原 佑平(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 上野 綾子(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 丸山 紘嗣(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 平松 慎介(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 平良 高一(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 末包 剛久(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐野 弘治(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 中井 隆志(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 川崎 靖子(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 佐々木 英二(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 木岡 清英(大阪市立総合医療センター 肝臓内科), 根引 浩子(大阪市立総合医療センター 消化器内科), 佐藤 博之(大阪市立総合医療センター 消化器内科)
抄録 【症例】84歳 男性【主訴】特になし【既往歴】14歳 肺結核,83歳 左大腿骨骨折【現病歴】スクリーニング目的で前医にて施行された上部消化管内視鏡検査で,中部食道に潰瘍性病変が認められた.生検組織では悪性所見を認めず,多核巨細胞を伴う類上皮肉芽腫を認め,チールネルゼン染色で抗酸菌が少数散見されたため,精査・加療目的で当院消化器内科へ紹介受診となった.【経過】身体所見・血液検査では特記事項なく,当院で施行した上部消化管内視鏡検査で切歯より28cm付近の食道前壁に浅い潰瘍性病変を認めた.潰瘍底は浅く,白苔はほとんどなく,なだらかな小結節が散在していた.NBI拡大観察では潰瘍辺縁のIPCLが軽度拡張していた.生検組織では類上皮肉芽腫は明らかではなく,慢性食道炎の所見であったが,生検組織の抗酸菌培養法およびPCR法で結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を認めた.胸部CTでは空洞形成は認めなかったが左右上葉,右中葉中心に気管支拡張像と小粒状陰影を認め非結核性抗酸菌症が疑われた.喀痰抗酸菌培養を3回提出したうちの2回で,Mycobacterium aviumを検出したが,結核菌は検出されなかった.以上から食道に限局した食道結核と診断した.INH (300mg),RFP (600mg) ,EB (1000mg)で治療を開始し,治療開始3週間後の上部消化管内視鏡検査では食道潰瘍は平坦・瘢痕化した.【考察】本症例は肺結核既感染者であり続発性食道結核であると考えられる.症状として最も頻度が高い嚥下障害を認めず頚部リンパ節腫大等の理学的所見も認めず,検診の上部消化管内視鏡検査で本疾患を指摘された.食道結核は頻度としては少ないが結核既感染者やAIDSなどの日和見感染の要素を有する場合には念頭に置く必要があり,早期の治療開始が過去に多く認めた手術症例を回避できる最善の方法であると考えられる.
索引用語 食道, 結核