セッション情報 一般演題

タイトル 44:

特徴的な内視鏡所見を呈したcollagenous colitisの1例

演者 林 宏樹(三木市立三木市民病院 消化器内科)
共同演者 境 秀樹(三木市立三木市民病院 消化器内科), 家本 孝雄(三木市立三木市民病院 消化器内科), 田中 克英(三木市立三木市民病院 消化器内科), 堀 順子(三木市立三木市民病院 消化器内科), 佐貫 毅(三木市立三木市民病院 消化器内科)
抄録 症例は86歳男性で、前立腺癌の既往がある。慢性肺気腫で近医に通院していた。平成23年2月に心窩部不快感を認め、同医にて機能性胃腸症と診断され、lansoprazole15mgを内服していた。その頃より軽い下痢を認めることがあったが、自然経過で治癒と再燃を繰り返していた。平成24年9月下旬より5~7行/日の水様性下痢を認め、止痢剤や整腸剤の内服で経過観察されていたが改善を認めなかった。過敏性腸症候群と診断され、ramosetron hydrochlorideを追加内服したが改善しなかった。Proton Pump Inhibitor (PPI) をesomeprazoleに変更されたが、1ヶ月以上にわたり水様性下痢は改善せず、食欲低下も出現し、平成24年10月下旬に当科を受診した。受診時、発熱はなく血液検査でも炎症反応の上昇など特記すべき異常は認めなかったが、腹部CTで大腸の腸管拡張と液貯留を認め、何らかの腸炎と考えた。PPIを内服中であり、collagenous colitisを念頭に置き、下部消化管内視鏡検査を施行した。collagenous colitisにみられる内視鏡所見として微細顆粒状粘膜、血管不整所見、発赤粘膜、縦走潰瘍が挙げられ、本症例はS状結腸に数条の浅い縦走潰瘍を認めた。潰瘍周辺部位からの生検にて肥厚したcollagen bandを認め、その他、内視鏡的に異常を指摘できなかった部位からの生検でも肥厚したcollagen bandを認め、collagenous colitisと診断した。経過よりPPIに起因するcollagenous colitisと考え、esomeprazoleの内服を中止したところ、2日後より下痢は改善した。本症例のようにPPIの長期内服中に慢性下痢を認めた場合、collagenous colitisの可能性を念頭に置くことが重要である。今回、PPIを内服中に特徴的な内視鏡所見を呈したcollagenous colitisの1例を経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 collagenous colitis, PPI